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2013年2月8日・22日
「養う×温泉」
日本は世界有数の温泉大国。
地球の息吹を感じる源泉の数は、2万5千ともいわれています。そのうちの、実に3割が九州にあることを、ご存知でしたか?
九州を代表する温泉郷、別府…。
地中深くから湧き出す自然の恵みをこの地では、様々に活かしてきました。
大分県、別府が、日本屈指の温泉地となった理由は2つ…
ひとつは周囲に火山が多いこと。そして、火山灰などが降り積もった大地は、雨水が染み込みやすく、豊富な地下水に恵まれたこと。温泉の湧出量は、日本一を誇ります。その姿も色々。酸化鉄などを多量に含んで赤く染まった温泉もあれば…熱い泥がグツグツとたぎる様子や、間欠泉なども見ることが出来ます。吹き上がる湯煙に、人々は大地の神秘を感じ、自然に対する畏敬の念を抱いてきました。
別府温泉を中心に、8つの温泉地を総称して、別府八湯…
それぞれに、泉質は異なります。
別府八湯の中で、湯量も源泉の数も最も多いのが、鉄輪温泉…
湯煙が立ちのぼる光景は国の重要文化的景観にも選ばれています。
訪ねたのは町の中心にある「ひょうたん温泉」。大正11年の創業当時、ひょうたん型の建物は、鉄輪のシンボルだったそうです。
2009年、日本の温泉としては唯一、ミシュランの旅行ガイドで三つ星を獲得しています。理由は公表されていませんが、ひょうたん温泉は、源泉100パーセントのお湯を、多彩に楽しめるところが特色です。
泉質は、ナトリウム塩化物泉。温泉ファンの間では、お肌に潤いが戻ると評判だそうです。別府の源泉は、ほとんどが100度に近い高温ですがこちらでは水で薄めずに温度を下げる、特別のやり方を採用しています。そこに、昔ながらの知恵が生きていました。
100度の源泉を冷やす仕掛け、湯雨竹は、電気もガソリンも使いません。あふれ出す源泉を、竹の枝を利用して、50度にまで冷ます工夫です。つまり、実にシンプルなラジエター…。いまや全国の温泉に、この、湯雨竹が広まっていると聞きました。源泉100パーセントの温泉を風情のあるエコな冷却装置が支えています。
鉄輪温泉には、かつて、長期間、滞在する湯治客のための「貸間」が数多くありました。その名残をいまに伝える宿、サカエ家。貸間では、ただ温泉に浸かるだけでなく、温泉のパワーを最大限に引き出す工夫が、随所に施されていました。八角形の大きなテーブル…テーブルの下には、温泉の蒸気を循環させる配管がありました。真冬でも、電気ごたつに負けない暖かさです。蒸気を利用した暖房設備は客室にも…当然、暖房費はかかりません。湯治客のために作られた洗濯物の乾燥室。ほどよい湿度が保たれるので、乾いても生地はゴワゴワにならず、ふっくらと仕上がるそうです。
まだまだありました。もうもうと湯気をあげていたのは、鉄輪温泉に昔から伝わる地獄釜。蒸気を利用した、蒸し釜です。地中からの蒸気を分配して、ひとつひとつが、天然の蒸し器になっていました。勢いよく吹き上がる蒸気は、およそ100度。この上に、土地の新鮮な食材を入れておくだけで、名物の地獄蒸し料理が出来上がります。以前は、湯治客たちがめいめいに好みの食材を買い求め、宿に備えられた蒸し釜で調理するのが習わしだったそうです。蒸気の量をバルブで調節することで、どんな食材も、美味しく蒸し上げることが出来ると云います。ナトリウム塩化物泉には匂いがありません。エビやワタリガニといった海の幸から、卵やサツマイモまで、わずか5分…。温泉の塩分とミネラルが適度に染み込んで、素材本来の味も際立ちます。
別府八湯の中で最も山深い場所にある、明礬温泉…
高台に広がるひなびた温泉地の泉質は、単純酸性の硫黄泉…
いたるところから硫黄の匂いが漂ってきます。
かつてここは明礬の生産地でした。その土壌を生かし、江戸時代から、茅や藁で屋根を葺いた小屋を利用して、「湯の花」が作られてきました。
天然の入浴剤「湯の花」は、古くから珍重され、「湯の里」に伝わる製法は、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
湯の花小屋はいまも現役。温泉の効能を、家に持ち帰って味わいたい…そんなニーズが、昔も今も変わりません。
別府から、クルマでおよそ2時間。熊本県の黒川温泉。
筑後川の源流に沿って、24軒の宿が軒を連ねる黒川温泉は、いま、人気急上昇中の温泉地です。その秘密は、全国に先駆けて町ぐるみで提案した、温泉の新しい楽しみ方にありました。
入湯手形を購入すれば気に入った宿の温泉を、どこでも3カ所回ることが出来ます。いまやポピュラーになった、湯めぐりは黒川温泉の人気に火をつけました。
人気を誇る黒川温泉ですが一時は存続が危ぶまれたこともあったそうです。古い歴史はあるものの、1970年代は観光客が激減し、多くの宿が農家と兼業でした廃業する者も多かったと云います。なんとかしなければ…試行錯誤の中から、あるアイデアが生まれました。それは、宿と宿を結ぶ道を廊下に、ひとつひとつの旅館を、客室に見立てる考え方でした。街全体を、大きな旅館のように捉えて貰おうという発想です。湯めぐりが評判を呼ぶと、料理にも工夫が凝らされました。黒川の土地にこだわった食材を…。こうした取り組みが実を結び、やがて、黒川温泉は、国内で大きな人気を争う温泉地となり、いまや、海外からも観光客がやってくるまでになったのです。復興の根っこには、やはり、豊かな温泉のチカラとそのチカラを信じた、街の人々の努力がありました。
地球のエネルギーをじかに感じる、温泉…。
日々の仕事に疲れた時、ちょっとリフレッシュしたい時、その温もりは、私たちの英気を養ってくれます。
春が待ち遠しい今日この頃…。みなさんも、ふらりと温泉…いかがですか?
ひょうたん温泉
大分県別府市鉄輪159-2 |
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別府海浜砂湯
大分県別府市上人ヶ浜 |
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旅乃宿 サカエ家
大分県別府市鉄輪井田2 |
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明礬 湯の里
大分県別府市明礬温泉6組 |
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べっぷ昭和園
大分県別府市大字別府字乙原3783-1 |
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別府地獄めぐり
別府地獄組合
TEL:0977-66-1577 |
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御客屋
熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6546 |
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湯本荘
熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6700番地 |
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新明館
熊本県阿蘇郡南小国町黒川温泉 |