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2012年8月31日・9月14日
「音×震わす」
耳をすませば、聞こえてくる、自然の音。
そこには命の鼓動があります。
日本人は昔から、森羅万象の響きを敬ってきました。
だからこの国には、安らぎの音楽が溢れています。
まずこの国を代表する音色を奏でる三味線。
どこでも演奏ができるとあって、近世以降、日本の芸能文化で多いに花を咲かせました。
実は壊れた箇所だけパーツを変えて使い続けられ、ものを大切にする心が宿っているのです。
演奏してみればジーンと響く三味線。
弦の振動が棹に触れるこの音こそが日本の音における最大の特徴、倍音です。
極めてシンプルな構造の日本の楽器、尺八。
奥行きある豊かな音色は、どこから生まれるのでしょうか。
西洋は「ドレミファソラシ」の七音階。
一方日本は「宮商角徴羽(きゅうしょうかくちう)」の五音階。
五音階でも音色を変化させることで音に奥行きを出しているのです。
その特徴の一つは、同じ高さの音でも息の強弱で様々な音色を奏でる。
次に、同じ高さの音でも指使いを変えて様々な音色を奏でる。
そして最後は、音程・ビブラート・音のゆらぎなど繊細な音色は首の動かし方で表現する。
自然、そして宇宙までをも音楽にしたものがあります。
平安時代初期に完成した、雅楽。
その完成度と歴史の深さは類を見ず、『世界最古のオーケストラ』と言われています。
今でも、重要な神事の際に奉納される雅楽は、そもそも宮廷音楽として発展しました。
貴族のたしなみの一つともされ、1300年以上前の法律、大宝律令には、
国を上げて雅楽を確立することが記されています。
古代の音楽をほぼそのままに伝える雅楽は、世界の音楽史上でも、大変貴重とされています。
平安の時代から雅楽は、楽器、演奏形態、音楽理論に至るまで、何一つ変わっていません。
一列目には、演奏をリードする打楽器。
二列目の弦楽器は、リズムを担当。
そして一番後ろに、メロディーを奏でる管楽器。
こうすることで、指揮者がいなくても打楽器に合わせて音色を重ねていけるのです。
西洋音楽の概念が当てはまらないのが、雅楽。
拍子のとりかたも一定ではありません。
それは、日本特有の"間"。
演奏する者同士の呼吸や、感情が高ぶれば鼓動が速く打つのと同じこと。
自然の摂理にのっとった "間"の哲学が込められています。
ヨーロッパで交響曲ができるはるか千年前。
すでに完成していた雅楽は、自然に即して生まれました。
祈りが自然と一体になり、心震える。 日本音楽の源流の1つ、声明。
京都大原にある古刹、来迎院は、声明(しょうみょう)発祥の地として知られています。
日本の音楽を語る上で欠かせない声明は、日本に仏教が伝来して以来、フシをつけて、お経を唱えたのが始まりです。
およそ1200年前、比叡山に伝わった声明は7つに分かれていました。
それを1つにまとめたのが、来迎院の創設者、良忍でした。
声明の楽譜、「博士(はかせ)」。
演歌につながる節回しや、こぶしの原点、塩梅(えんばい)が記されています。
塩梅とはこの1音1音の微妙なつながり。
これが演歌のこぶしへと変化したのです。
塩梅により五音階の幅を広げられるのです。これは西洋にはありません。
日本の音を響かせる楽器の一つ、太鼓。
その歴史は縄文まで遡り、和楽器の中で、最も古いとされています。
新潟県・佐渡島。
ここで、30年前に和太鼓を中心とした新しい音楽芸能が誕生しました。
音楽芸能集団「鼓童(こどう)」。
鼓童とは多くの演奏者が一斉に和太鼓を奏でる音楽芸能。
1981年に佐渡島で誕生し、今では全国から集まったおよそ60人のメンバーが佐渡を拠点に活動しています。
鼓童が目指すのは自然の中で音楽を作り、そして、自然に学び、自然と共に生きる事。
佐渡の地で磨かれた音楽は、国境を超えて高い評価を受け、日本人アーティストとして初めてノーベル平和賞コンサートへも招かれました。
そんな中、和太鼓が持つ原始的な日本の息吹に魅せられた人がいます。
歌舞伎界を代表する役者であり人間国宝の坂東玉三郎さん。
12年前に鼓動と出会って以来、足しげく佐渡に通ったといいます。
初めて演出を手掛けたのは2003年。それを皮切りに、鼓童との共演も実現。
そして玉三郎さんは今年、鼓童の芸術監督に就任しました。
かけがえのない日本の音。
それは、この豊かな自然があったからこそ生まれたのです。
亀屋邦楽器
住所:東京都世田谷区豪徳寺2-30-10 |
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市比賣神社
住所:京都市下京区河原町五条下ル一筋目西入ル |
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来迎院
住所:左京区大原来迎院町537 |
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太皷館(宮本卯之助商店西浅草店)
住所:東京都台東区西浅草2丁目1番1号4階 |
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太鼓芸能集団 鼓童 |
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藤原道山さん
公式HP: http://columbia.jp/dozan/ |
マーティ・フリードマン
<プロフィール> |