にほん風景物語

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志賀直哉が愛した名湯・城崎 ~竹田城跡から但馬路を歩く~

文豪・志賀直哉が残した名作「城の崎にて」。実体験を元に、生きること死ぬことについて考えたこの作品は、簡素でありながら、みずみずしい文章で記され、比類なき名文といわれています。

その直哉が幾度となく訪れ、生涯愛したとされる城崎温泉を中心に、"日本のマチュピチュ"とも言われる竹田城跡、特別天然記念物コウノトリが舞う自然、出石の城下町や名物の皿そばなど、但馬の歴史と風情ある町並みを作家・島田雅彦さんが旅します。

城崎温泉は、志賀直哉をはじめ、島崎藤村や泉鏡花など多くの文豪が逗留した名湯。その歴史は1300年を誇るとされ、今も風情ある温泉街と人情溢れる人たちが観光客を温かく包み込みます。

また人間の生と死に向き合っていた志賀直哉は、後にこのように 書き記しています。

「人間といふものが出来て、何千万年になるか知らないが、その間に数えきれない人間が生れ、生き、死んで行った。私もその一人として生れ、今生きているのだが、例えて云へば悠々流れるナイルの水の一滴のようなもので、その一滴は後にも前にもこの私だけで、何万年遡っても私はいず、何万年経っても再び生れては来ないのだ。しかも尚、その私は依然として、大河の水の一滴に過ぎない。それで差支えないのだ。」 ~ナイルの水の一滴~(全文)