うたの旅人

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初回放送:2011年2月8日「愛燦燦」




「最近、なぜか二つの歌のことを思うんです」
――と、美空ひばりの息子で「ひばりプロ」の社長、加藤和也さんが言う。ひばり最後の歌『川の流れのように』と、その2年前の『愛燦燦』である。
『川の~』には「歌手・美空ひばりの意地を感じる、でも『愛燦燦』には、あの人の我がない。何のこだわりもない。――僕はあの歌に、おふくろの加藤和枝を感じます」

名曲『愛燦燦』はCMソングとして生まれた。――ハワイのサトウキビ畑で働く大家族。夕方、収穫を終えた一家が馬車で家路を急ぐ。母に抱かれ眠る少女。突然の激しい夕立。小屋の軒先で雨を避ける一家を、やがて真っ赤な夕日が照らす――「家族愛」がテーマの、この某食品会社のCMに、若き映像プロデューサーは美空ひばりの歌をどうしても使いたかった。「美空ひばり以外、考えられなかった」

歌手生活40周年を迎えようとし、レコード会社コロムビアの大看板、雲の上の人に対する無謀とも言えるオファー。誰もが突拍子もないことと思ったこの試みに、なぜ、ひばりは応えたのか?――番組は、その謎を追い、CMが撮影された場所であり、現在、仕掛け人だった映像プロデューサーが暮らすハワイに飛ぶ。 『愛燦燦』は、今もハワイの日系3、4世の圧倒的な愛唱歌である。日本語ラジオのカラオケ大会で歌われ、土曜日の朝の音楽番組で流れる。
当時の撮影現場など『愛燦燦』ゆかりの地や、映像プロデューサーへの取材の中、浮かび上がってきたのは、かつての夫だった小林旭に対する、美空ひばりのある想いであった。

また、この歌には不思議な言葉が使われている。「愛燦燦」である。この言葉を作ったのは作曲及び作詞の小椋佳。彼の造語である。『夢芝居』や『泣かせて』の大ヒットを飛ばし、当時現役の銀行マンでもあった売れっ子シンガー・ソングライター小椋にとっても、この歌には特別の想いがある。
♪雨清清(さんさん)と、この身に落ちて~、♪風散散(さんざん)と~、そして♪愛燦燦と~。
――韻を踏む、これらの歌詞にこめられたメッセージは果たして何なのか?
「まるで、チリの鉱山事故のリーダーみたいに、家族の真ん中でどっしりと存在していた」と、CMの映像に出てくる印象的な母親のことを、小椋はそう表現する。「この女性がどんな人生を送ってきたのか、見る人に考えさせるのです」

それは、あたかも美空ひばり自身の人生とも重ね合わせられているかのような歌詞。
そして、聴く者すべての人生をしみじみ噛み締めさせる歌詞。

番組は、小椋佳の証言を通じ、今も歌い継がれ、聞く者を感動させてやまないこの名曲の歌詞の秘密を解き明かす。

♪人生って 嬉しいものですね。