建物遺産~重要文化財を訪ねて~

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萬翠荘(旧久松家別邸)

山頂に松山城を望む斜面に建てられた1, 2階は鉄筋コンクリート造、3階は鉄骨木造造りのフランス風洋館。旧松山藩主の子孫にあたる久松定謨(ひさまつさだこと)が別邸として松山藩家老屋敷跡地に建てた。久松は、永くフランスに駐在した経験をもつ。設計は、木子七郎(きごしちろう)。東京帝大工科大学建築学科で西洋建築を学んだ建築家で、後に愛媛県庁も手掛けた。建築にあたっては、木彫家・相原雲楽や洋画家・八木彩霞、装飾硝子作家・木内真太郎など、当時各分野で活躍してた芸術家の参加を得た。本館は、サンマード屋根や連続アーチのバルコニーを持つ外観から内部装飾まで、フランス・ルネサンス様式を基調とした意匠が用いられ、各部屋の使用方法も含めて一貫した西洋式で計画されたことで高い統一性をもつ意匠に結実している。日本人建築家の素養を示す優れた意匠の建築作品として、高い価値が認められる。