建物遺産~重要文化財を訪ねて~
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旧名古屋控訴院 地方裁判所区裁判所庁舎 [現・名古屋市市政資料館]
赤い煉瓦壁と白い花崗岩の色調の対比が美しいネオ・バロック様式を基調とする官庁建築。中央及び両脇に塔屋を配し、正面車寄せ上にはバルコニーが設けられ、その手摺には正義の証として神剣(クロス)と神鏡(サークル)をモチーフとしたレリーフが見られる。内部は総じて簡素な意匠。2階3階を吹き抜けとした中央階段室には、司法の公平さを表す「天秤」がモチーフのステンドグラス、天井には半円形の屋根がかかり中央の「日論」のステンドグラスから光が降り注ぐ。3階の会議室も優れた意匠で見どころ。構造は、鉄筋コンクリート造の梁や床と煉瓦壁の組み合わたもので、近代建築の構造技法の変遷を示す好例である。設計は司法省営繕課があたり、金刺森太郎が現場を担当した。