戦いが聴こえた ~ラジオが伝えた太平洋戦争~

戦いが聴こえた ~ラジオが伝えた太平洋戦争~

放送内容

特攻隊員たちがラジオに残した遺言


開戦から時間がたち戦況が悪化するにつれて、「勝利の記録」のような威勢のいい番組は姿を消していった。そうした状況の中、戦争末期に放送された番組がある。
内容は歌や演芸、戦地から家族への手紙の朗読など。特攻隊の1人としてフィリピン沖に散った牧野顕吉少佐は出撃前、このラジオ放送で、最愛の弟に宛てたメッセージを残した。
その音源を分析しながら、弟・稔さんの長女を訪ね、当時の話を聞いた。
稔さんが大切に保管していた兄・顕吉さんからの手紙には、こう書かれていた。

「これからは科学の時代。科学で日本を築いていってほしい」―。

ラジオを通して告げられた弟への最後のメッセージも、この手紙と同様のものだった。
戦後、稔さんは繊維関係の技術者として活躍。兄の手紙に込められた思いを胸に、科学とともに生き続けた。
一方、放送で遺言を残しながら、生き残った特攻隊員もいる。満州で結成された飛行隊の面々は、満州の新京放送局でメッセージを収録した。収録に参加した隊員・久貫兼資さんは、知覧から沖縄に向けて飛行中、トラブルに見舞われ不時着。機体は炎上し大けがをしたものの奇跡的に生還した。
そしてもう1人の生還者、上村隆男さん。3年前に亡くなった上村さんが残した音源は、思いもよらぬ形だった。家族への思いをつづった“詩吟”。妻は「涙もろい夫は、手紙を読み上げると泣いてしまうと思い、詩吟に思いを込めたのであろう」と語る。上村さんは毎晩のように特攻隊の仲間の写真を見ながら晩酌していたという。この世を去るその時まで、特攻隊時代の体験を抱えて生きたそうだ。

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