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2014年1月31日放送
「漲る×豆」
この一粒に秘められた大いなる力。余りにも身近にある豆。小さくて身近な存在。見つめ直すと新たな発見と未来を感じさせる力が漲っていたのです。
東京・築地。創業60年。店内に並ぶのはほとんどが国内産の豆。日本で流通する大豆の大半は輸入です。日本で一番古くからあるのは大豆。大豆と同じく昔から食べられてきたのが小豆。太陽や火、血の色を象徴するその鮮やかな赤い色は魔除けの力があるとされてきました。食べる事で邪気を払い身を守ってくれると考えられていたのです。豆の種類はその姿形も様々。豆は日本の食文化を支えるのに欠かせないものです。しかし日本人と豆の関係は食文化だけではありません。
2月3日「節分」。その節分に深く関わる場所、京都の「吉田神社」。平安京の守護神として創建されました。それにしても吉田神社と節分の行事2つを繋ぐものとは・・・?実は節分と関係があるのは方角でした。京都御所の北東の方角にある吉田神社。かつて鬼門となる北東から災いが来ると信じられていたので御所の表鬼門を封じるため建てられたのです。さらにその反対側の裏鬼門にあるのは壬生寺。今も節分の日には鬼払いを演目とした伝統的な「壬生狂言」が行われます。吉田神社には節分で鬼を払う元となる縁のものがありました。吉田神社で行われている追儺式とは平安時代、宮中で大みそか(今の節分の日)に行われていた鬼払いの儀式。でも鬼に豆をまいていません。「災い」を鬼という姿に変えて追い払った先人達。お馴染みの鬼の姿にも意味があります。これは方位を十二支で表したもの。災いは鬼門(北東の方角)から来るとされていました。その北東の位置にあるのが「丑」と「虎」。2本の角は牛の角、虎柄のパンツは虎の方角から来たものだったのです。ではなぜ豆を使って鬼を退治するようになったのでしょう?それは、豆というのは古来は呪術に用いられて非常に生命力の高さから呪い事に使われたからです。豆を投げて魔物を滅ぼしさらにその豆を食べることで無病息災を祈る「福豆」。大豆を炒ったのは厄を祓うために最も力の強い火を使って霊力を高めたとも伝えられています。豆一粒にみなぎる力を頂いて人々は幸せを願ってきたのです。
大豆一粒一粒から漲る力を頂き古来より長寿食として食べられている「豆腐」。とりわけ豆腐文化が栄えたのは京都。ここには多くの豆腐料理屋があります。訪れたのは老舗豆腐料理店「西山艸堂」。最高のおもてなしのために用意されたメニューは1つだけ。メインはもちろん湯豆腐です!頂いたのはまるで絹のように滑らかな木綿豆腐。老舗豆腐店「森嘉」の嵯峨豆腐です。創業は江戸時代。その味は川端康成、司馬遼太郎も愛した逸品。そんな豆腐作りは深夜12時から始まっています。豆そのものやその日の天候によっても微妙に状態が変わる大豆。森嘉の豆腐作りにはその風味を生かす工夫が随所に見られます。一晩水に浸した大豆をすり潰すのに使うのは石臼。これは大豆の味と香りを残すため。時間をかけて挽くとたんぱく質も失われにくいそうです。さらに薪を使う地釜で大豆を炊くというこだわりも。絶妙な火加減でじっくりと。地釜を使うことで豆を炒ったような香ばしい香りが豆腐に宿ります。1人の職人が最初から最後まで作り上げる豆腐。絹のようにやわらかくツルンとした木綿豆腐にはまだヒミツがありました。それは、にがりではなく元々石膏から作られる「すまし粉」を使うこと。保水力が高く、やわらかくて、きめ細やか。それでいて弾力のある豆腐を作りあげるのです。試行錯誤し辿りついたのが現在の嵯峨豆腐です。丁寧に豆と対話し作られる豆腐。
醤油に味噌、豆腐と日本の食文化を支える大豆。しかし様々な理由から市場に出回る大豆のほとんどが輸入です。ところがあえて国産大豆だけで勝負に出る人がいました東田さん。お店では国産の大豆しか使いません。その土地土地の大豆の味にこだわった豆腐作りを目指しています。さらに彼の豆腐は豆の生産そのものを考えることから生まれていました。それが「地豆腐」です。こだわったのは1つの種類の大豆だけで作ること。月替わりで種類を変えその味を探求しています。彼は全国各地を巡り美味しい大豆を探しだしています。倉庫に眠っていたのは豆屋と契約農家から送られてきた大豆。古くから日本で作られていた様々な品種の大豆。この国で育った大豆の生命力でより豊かな味わいを知ってほしいのだそうです。
漲る豆の力をより今の時代に合わせて活用している人達に出逢いました。大阪を拠点にするクリエーター。納豆TVプロジェクトを設立し活動しています。納豆の魅力を発信しながらコミュニケーションの場を提供しています。その理由は納豆が苦手な友人のためにそのイメージを変えたいと考えていたからです。ところがその半年後震災が起こります。彼らは自分達の活動を見つめ直しました。そこで生まれたのが7種類の豆が入ったカラフルな納豆。おいしくて健康になり東北のチカラにも繋がる納豆を作れたら…熱い思いは企業を動かしました。オリジナルの色とりどりの豆が入った「ネバーギブアップ納豆」を作りだしたのです。売り上げの一部は復興支援にあてられます。さらに賛同した飲食店がメニューを考案。豆のチカラで日本を元気に。納豆をキッカケに新たな出会いが生まれています。
希望をもたらす納豆もあれば日々の暮らしに幸せをもたらす納豆もありました。東京、八王子で納豆店を営む小堀さん。作るのは松の木を使った経木納豆。昔ながらの製法にこだわり、今では珍しい手作り納豆を作り続けています。信条は手間を惜しまないこと。1つ1つ丁寧に選別。使う道具も昔ながら。大豆を蒸すのに使うのは大きな圧力釜。これも納豆の美味しさをより引き出すポイント。豆がふっくら蒸しあがり甘みも引き立つ圧力釜。松の木で出来た経木。自然な湿度を保ち乾燥やべたつきを防ぐ経木。豆も柔らかく納豆菌にとっても発酵しやすい環境を作ります。作業から3時間。大豆がふっくら仕上がりました。ここに納豆菌をまんべんなく降りかけます。そして大豆が冷めない内に手分けして1つ1つ経木に手包み。多くは作ることができないけれど続けていけるのはお客さんの「美味しい」という言葉があるからこそ。どこか懐かしく優しい気持ちが伝わる納豆。一日を乗り切る活力を与えてくれます。
有限会社 三栄商会
〒104-0045 |
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吉田神社
京都市左京区吉田神楽岡町30番地 |
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嵯峨豆腐 森嘉(さがとうふ もりか)
〒616-8447 |
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久在屋
〒615-0881 |
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小堀栄養納豆店
〒192-0074 |
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壬生寺
〒604-8821 |
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西山艸堂
〒616-8385 |
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710TV PROJECT |