SHISEIDO presents エコの作法
  • トップページ
  • 【エコの作法】
  • バックナンバー
  • スタッフ

バックナンバー

2013年6月28日・7月12日放送
「守る×日本の収納 」 

幾度となく火災や災害に見舞われても、その都度美しく生き返ってきた町、京都。
町屋はそのような時の流れ、人々の暮らしの積み重ねが工夫となり、知恵となり文化となって京都の人々を支えてきました。ここ冨田屋は明治18年より創業の老舗呉服屋で、店舗兼住居として建てられた町家には建物全体を風が通り抜けるよう、坪庭が配されています。その風を取り込むように佇むのが、蔵。土で出来ている蔵は火災に強く、大切な物を湿気などからも守ります。町家暮らしには欠くことのできない重要な役割を担っていました。

四辺が山に囲まれた盆地の京都はとりわけ夏は蒸し暑く、冬は底冷えの地。そこで京都に住む人はいかにその夏、その冬を過ごすか知恵を絞ってきました。毎年6月になると町家は冬の姿から夏の姿へと「建具替え」が行われます。京都の人々にとって「建具替え」は暮らしの中に深く根付いてきた習慣であり、先人の経験と知恵の結晶ともいえる建具や敷物などを季節季節に設えて日々の生活を大切にしてきました。

蔵のまち、喜多方。今も4000を超える蔵が点在しその多くは暮らしの中で使われているといいます。街を見渡せば蔵ばかり。クラインさんが訪れたのは国の有形文化財に指定されている「若喜商店」。1755年創業以来、醤油、味噌の老舗醸造元。8棟の蔵を所有し、様々な用途で使われています。火と湿気に強い蔵は、喜多方でも大切な物を収納する場所として使われています。

料理家、ワタナベマキさん。本や雑誌などで季節感ある料理と身体に優しい食を提案しています。3人家族で住んでいる自宅は、料理教室を開く仕事場でもあると言います。目指したのはすっきりとしつつも温かみのある部屋。ワタナベさんが収納で心がけていることは、"見せる収納"と"隠す収納"の棲み分け。ほんの少しの工夫で部屋は快適に生まれ変わります。ものを買ってから収納場所を考えるのではなく、暮らしに合ったものを選ぶ。発想を転換すればムダを減らし、快適な空間を保つことができます。

土地の狭いこの国では無理なくコンパクトに収納する知恵や工夫が息づいています。それは畳む収納。風呂敷、扇子、和傘…着物。機能を失うことなく、省スペースに収納できる「畳む」収納は、日本の美でもあります。

最高級家具の代名詞、桐の箪笥。会津の桐箪笥はその中でも一級品とされ、今でもその伝統は残されています。尾瀬を源流とする只見川を中心に多様な植生が育まれている自然豊かな地。福島県・奥会津。そして、ここは日本でも珍しい桐の生育に成功した場所でもあり「桐の里」と呼ばれています。手入れがいき届かないと虫が入ります。こうなってしまうと箪笥の材料には出来なくなってしまいます。伐採した桐を板に加工したら渋抜きという天日乾燥を行います。湿気を吸収し燃えにくい桐の特性を引き出すには相当の年月を必要とする桐箪笥作り。これだけの桐があっても箪笥に出来るのはほんの少しだけです。桐箪笥の要、引き出しは中に入れる着物などを湿気から守るため隙き間は許されません。そのため、最初は引き出しを少し大きめのサイズで作り、カンナで少しづつ削り仕上げるのが伝統的な作り方です。少しでも削りすぎれば、使い物にならなくなってしまいます。桐箪笥は人間の手でしか生み出せない匠の技です。

さらに桐箪笥には職人の隠された工夫があります。それは引き出しの奥の隠し鍵です。鍵を押し込めば隣の引き出しが開かなくなる仕掛けです。もう一つの細工は一番下の引き出しです。これは大切なものを仕舞っておく隠し箱です。また、桐箪笥は何度でも新品に蘇らすことができます。色あせたり傷を付けてしまっても表面を削り直せば元に戻ります。
職人の技が息づく会津の桐箪笥は日本の風土と共に磨き上げられた、環境にも優しい伝統家具です。

東京都世田谷区。少し奥まった場所に築66年、戦後間もなく建てられた日本家屋に住んでいるのは器修理人の黒田さん。生まれた時から日本家屋に住み、現在の家は7軒目の日本家屋です。こだわる理由は収納の多さだそう。落ち着いた色の家具で統一されたシンプルな日本家屋。けれども押し入れや棚の中にはきっちりと本や道具が整理整頓されていました。いろいろなものが視界に入ると落ち着かないという黒田さんは隠す収納にこだわっています。また、昔ながらのものが好きな黒田さんの家には伝統的な収納家具がたくさんあります。蝿帳、行李。そして長持ちという日本の伝統家具です。まだ箪笥がなかった江戸時代に布団や衣類を納めていた長持ち。嫁入り道具を運ぶ時にも使われたといいます。この金具に棹を通して運んでいたことから数え方は一棹二棹。箪笥と同じですね。押し入れの中にはテレビや本が入ってます。押し入れなどの豊富な収納は、日本家屋の魅力として黒田さんなりにアレンジし、使っています。

冨田屋

〒602-8226 京都市上京区大宮通一条上ル
TEL: 075-432-6701
FAX: 075-432-6702
http://www.tondaya.co.jp/

(有)若喜商店

〒966-0817 福島県喜多方市字三丁目4786
TEL: (0241)22-0010
FAX: (0241)23-1446
http://www.akina.ne.jp/~wakaki/

会津桐タンス株式会社

〒969-7402 福島県大沼郡三島町大字名入字諏訪の上394番地
TEL : 0241-52-3823
FAX : 0241-52-3828
http://www.aizukiri.co.jp/index.html

アストリッド・クラインさん


<プロフィール>
イタリア・バレーゼ生まれ。イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで建築の芸術学士号を取得。1988年来日。伊藤豊雄建築事務所を経て、1991年に「クライン・ダイサム・アーキテクツ」を設立。建築からインテリア、イベントなど、多面的なデザイン活動を展開。今後も日本を拠点に建築家として活動し、大好きな日本に長く住み続けたいという思いから2008年に「永住者」の資格を取得した。