SHISEIDO presents エコの作法
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2011年12月9日・23日放送 「結ぶ×出雲」

「神話の国」出雲。
年に一度、旧暦の10月10日。
「八百万」といわれるあまたの神々を歓迎するため…
出雲では様々な神事が行われます。
その時期、出雲の人々は神に頭をたれ、街は神秘的な空気に包まれるのです。
現代の人々の心をとらえる神話の国、出雲。
千年以上続く日本の神々の伝説の陰には「結ぶ」というキーワードがありました。
今夜は、出雲。
現代のエコにも繋がる日本人の「結ぶ心」をご紹介します。
八百万の神が集う場所といわれ「縁結び」のパワースポットとして人気の出雲大社。
出雲大社では、年に1度、神々を迎える儀式が行われます。
それが、「神迎祭」。
神々は、海を渡ってくるといわれます。
島根半島の西、海沿いにある出雲大社。
その近くにある海岸が、「稲佐の浜」。
神話の舞台ともなった、美しい浜辺です。
日本中の八百万の神は…この浜から上陸し、出雲大社へ向かうのです。

島根半島の西の端、日御碕には「夜の世界を司る」と言われる日御碕神社があります。
出雲は「日没」の方角にある地域。
この神社は「日の出」の方角にある伊勢神宮が「昼の世界を司る」のと対になっているのです。
昼は、人間が活動する明るい世界。
一方、夜は何も見えない闇の世界。
人は昔から、この暗闇と神や怨霊など「超自然的なもの」を結びつけてきました。

出雲大社に集まった神々は「上の宮」という場所で話し合いをします。
話し合いの内容は、世の中の『縁』について。
日本中の神様が集まって、あらゆるものの「縁」を決めているのだそうです。
このため、出雲大社は「縁結び」にご利益があるとされているのです。

人を、あらゆるものと結びつける日本の神々。
外国人ながら、そんな出雲の「縁結び」に強く惹かれていたのが…
明治時代、アイルランドからやってきたラフカディオ・ハーン。
もともと新聞記者として赴任してきたハーンは知人から、出雲での英語教師の仕事を紹介され、この地に移り住みました。
出雲をとても気に入ったハーンは、日本人のセツと結婚し、「小泉八雲」と名乗るように。
その後、出雲に残る数々の幻想的な民話に興味を持った八雲は、それらを、英語で物語にまとめて「怪談」として出版。
出雲は海外でも知られるようになったのです。
八雲が、出雲の「神」をどうとらえていたのかを知るために、八雲のひ孫「小泉凡」さんにお会いしました。
出雲に暮らしながら、民俗学者として小泉八雲の研究をしています。

そんな八雲が愛した城山稲荷神社。
無数の狐から……日本人の信仰心を感じた八雲。
さらに八雲は、そんな神を信じる暮らしが人と自然を強く結びつけている事に驚きました。
日本の神々は、あらゆる自然に宿るもの。
だからこそ、日本人にとって「神への祈り」は、自然への敬意と同じことだと、八雲は理解したのです。

松江市にある、歴代・松平公が眠る菩提寺……350年の歴史を持つ「月照寺」です。
この寺にも出雲らしい「縁」があります。
ここには、八雲の怪談に登場した「あるもの」がいます。
境内のなかで、ひときわ目を引く巨大な石でつくられた大きな亀。
怪談の中で、この大亀の巨石は夜中にむっくりと動き出し…松江の街を徘徊します。
そんな民話が生まれたのも、大きな石に魂が宿る…
昔から日本人はそう考えていたからです。
八雲が「怪談」を書いたのは、そんな、日本人と自然との結びつきの深さに感銘を受けたためだったのです。

お茶大名・不昧公(ふまいこう)のお膝元である松江は、金沢・京都にならぶ3大和菓子どころ。
明治創業の老舗「風流堂」が受け継いでいる不昧公以来の、お茶と和菓子の文化 和菓子もまた、日本人の自然との縁の結びつきを感じさせてくれます。

「荒神(こうじん)さん」は、出雲のいたるところで見られる「樹木への信仰」。
木に宿った、それぞれの町の守り神です。
出雲の人々は、木に宿る神々をとても大切にしています。
それによって、「自然との縁」が欠かせないものであることを、常に、肝に銘じているのです。
木は自分たちを守ってくれる…。
だから、木を大切にしなければならない…。
神の物語を通して人と自然が結びつく「共生」の形です。

戦国時代に栄華を誇った、尼子氏の居城があった、安来市・広瀬。
この地域名産の…素朴でありながら、今に通じる新しい感覚の図柄で高い人気を誇る着物。
それが、江戸から続く「広瀬絣」。
地元でも数少ない職人である、永田さんの工房を訪ねました。
「広瀬絣」は県の無形文化財にも指定されています。
その特徴は、模様の際にあらわれた独特の風合いと、藍染の美しさ。
藍で染められた綿の糸は、美しさとともに、その強度まで増すのだそうです。
美しく染めるためには、自然に敏感であることも必要です。
感謝の気持ちを持って自然と「縁」を結ぶ。
そんな想いが広瀬絣の美しさを守ってきたのです。

神々と結ばれた暮らし。
出雲では、神話が人々の生活を守っているといいます。

日本の神様が結ぶ「縁」。
それを信じるということは、人だけでなく、自然との繋がりをも信じること。
そして、結ばれたもの同士は運命を共にするパートナー。
人や自然を思い遣ることこそが、自分の幸せに繋がる。
出雲に集まった神々は、人々にそう言っているのかも知れません。

日本ぜんざい学会 壱号店

住所:島根県出雲市大社町杵築南775-11
電話:0853-53-6031

小泉八雲記念館

住所:島根県松江市奥谷町322
http://www.matsue-tourism.or.jp/yakumo/

広瀬絣センター

http://www.city.yasugi.shimane.jp/p/2/11/2/3/

出雲古代歴史博物館

http://www.izm.ed.jp/

KAnoZA

http://www.okashinet.co.jp/kanoza/

湯町窯

住所:島根県松江市玉湯町湯町965(山陰線玉造り温泉駅横)
電話:0852-62-0726

風流堂 寺町店

住所:島根県松江市寺町151
電話:0852-21-3241
http://www.furyudo.jp/index.html

アーサー・ビナード

<プロフィール>
アメリカ合衆国、ミシガン州生まれの詩人・俳人、随筆家、翻訳家。20歳でヨーロッパへ渡り、ミラノでイタリア語を習得。ニューヨーク州コルゲート大学英米文学部を卒業。卒業論文を書く際に漢字・日本語に興味を持ち、1990年6月に単身来日。来日後、通っていた日本語学校で教材として使用された小熊秀雄の童話『焼かれた魚』を英訳した事をきっかけに、日本語での詩作、翻訳を始める。現在は活動の幅をエッセイ、絵本、ラジオパーソナリティなどに広げており、全国各地で講演活動等も行っている。