ボクらの地球
放送内容
日本最後の秘境 西表島
満月に咲く奇跡の花
サンゴと大潮が育む誕生の瞬間
沖縄本島から約460km、琉球列島最南部の八重山諸島で最も大きな島、「西表島」。島の9割が自然林に覆われるこの地には、イリオモテヤマネコなどの絶滅危惧種や、天然記念物の指定を受ける貴重な動植物が生きている。また広大なマングローブやサンゴ礁の海など、豊かな自然環境の中で、さまざまな生き物たちが生活している。 夏。生き物たちの命が躍動する季節を迎える。今回、女優・工藤夕貴が東海大学沖縄地域研究センターの研究員とともに、大潮の時期に起こる生き物たちの命の営みに密着した。
○にぎやかな西表島の夏 大潮での命の営み
夏は多くの生き物が恋する季節。あちこちでさまざまな生き物の繁殖活動が見られる。サザナミハギは夕方の満潮に合わせて、雄雌が徐々に海の表面に集まり、集団で一斉に産卵と受精を行う。一方、陸からはオカヤドカリやオカガニなどが海に向けて卵を放つ。そして満月の夜、雪のように舞うサンゴの産卵が海の中で繰り広げられるのだ。
○月夜に咲く花 サガリバナ
西表島には、太陽を向かず、月の光を受けて、一夜だけ花をつける植物がある。南西諸島に自生する「サガリバナ」と呼ばれる樹木だ。サガリバナは虫たちの競争が激しい昼間を避け、夜に集まる虫へ向けて強い香りを放ち、引き寄せる。そして、朝日が差し込むと同時に、花はポタリ、ポタリと人知れず落ちていく。この時期にしか見ることができない、幻想的な光景だ。
○海に咲く神秘の花 ウミショウブ
ウミショウブは、大陸から海へと進出した植物の仲間。成長すると、海の中で高さが1m以上にもなり、光が届く浅い島の沿岸に生えている。ウミショウブの最も不思議な生態は、なんと、海の中に花を咲かせ、その雄花だけが海面を走り、雌花の元へ向かうという開花の方法。また、その開花は夏の昼間、大潮のたった3時間だけ行われるという。
はたして、その瞬間を目にすることはできるのだろうか? はかなくも懸命に命をつなげる西表島の生き物たち。その生命の神秘に迫る。