ヨーロッパ路地裏紀行

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[ フィンランド ]  ムセオ通り ヘルシンキ






フィンランドの首都・ヘルシンキ。「バルト海の乙女」と称えられる美しい海辺の都。街一番の目抜き通りマンネルヘイムの北にあるエトゥ・トーロ地区。中心街にありながら昔から閑静な住宅街がひろがる。第19回の舞台は、国立博物館の裏手に700mほど東西にのびる博物館通り、ムセオ通り。レストランや額縁屋など半世紀以上続く老舗がのこる地域だ。老舗にひかれ、こだわりのある店も増えはじめている。

*花屋店主 カイヤ・ユボネンさん (61歳)

先代の時代から60年続く花屋「カヴェル」を営む優しくたくましい女性だ。親子2〜3世代に渡る常連客のみならず、カイヤのブーケのセンスが大いに評判をよび、最近は企業のパーティや舞台挨拶用の注文もふえて繁盛している。しかしカイヤが花屋を継いでまだ11年ほど。もともとは花屋と縁のない人生だった。夫と長年プラスチックの棚の製造卸会社を経営していたが90年代の不況で倒産 したことが転機となった。姑のエステルの女手ひとつで切り盛りしていた花屋を手伝うことにしたのだ。花屋の仕事はカイヤの心に新たな光をあててくれた。フィンランド人は「食費を節約しても花束を買う」、長く暗い冬の生活にはかかせない。とりわけ真冬は最高のプレゼントになる。そして誕生、洗礼式、結婚という祝福の場、追悼に至るまで人生の節目に立会い演出できる、心あたたまる仕事 だった。だから日曜日もクリスマスさえ休まず営業していた姑の教えも守り、継ぐことを決意したのだ。商いも順調で新装開店したばかりだが、姑が半世紀使い続けた古いレジスターを店の宝として大事においている。でもいつも笑顔のカイヤが忘れえない追悼の花があった。それは長女ヘリとの早すぎる別れだった・・・

*美容師 ティーナ・タルベンサーリさん(32歳) 

通りの中程にある美容院「セウスファクタ」を営んでいる。ティーナの笑顔は通りの小さな太陽だ。美容学校卒業後、大手サロンに務めた後、通りで働き6年になる。もともとベテランのミラが長年一人でやっていた店だが、ティーナは静かな通りの風情が気に入り共同経営を申し込んだのだ。二人の個性にひかれ老若男女訪れる店だがティーナは、とりわけ通りのおばあちゃんたちの人気者だ。愛らしい笑顔と誰をも優しく包み込む人柄が老人たちをひきつけてやまない。ティーナは、たくさん個性に出会え、髪をとかしカットするひととき、お客さんと親密になり、嬉しいことも悲しいことも共感できることがやりがいだ。だからおばあちゃんたちは、日常の何気ないこと、心にためていた苦労話も、ティーナにはなんでも気軽に話せ、心やすらげるのだ。でもティーナが人を受け入れるおおらかな心を育くまでには、両親の離婚を乗り越えてきた過去があった。家族との触れ合いを、グリル料理ができるログハウス「コタ」などフィランドらしい生活スタイルと織り交ぜて紹介していく。