ヨーロッパ路地裏紀行
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[ オーストリア ] ウィーン ショッテン通り
旧市街の北側、ウィーン大学や市庁舎が集まる地区。今回の舞台、ショッテン通りの入口にあるのは路面電車やバスのターミナル。学校や仕事場と住宅地を結ぶ中継点だから、この通りはウィーン子なら誰もが通る場所だが、通りを旧市街の方へ向かえば、道幅はぐっと狭まり暮らしに根差した店が立ち並ぶ。
*キッチン用品店経営 ヴィルフリード・タッツライター さん(52歳)
通りに暮らして20年になる、ヴィルフィード。幼い頃に両親が離婚し、祖父母の元で育った。かつてウィーンでも有数の資産家だった祖父母は、戦争で財産のほとんどを失った。彼らの背中を見て育ったヴィルフィードは、かつての祖父母の栄光を取り戻すべく一心不乱に働いて、念願だった経営者となった。7年前から地区の議員も務めているから、スケジュール帳はいつもびっしりだ。自身も離婚して、今はシングルファーザーとなったヴィルフリード。たったふたりの家族だから、力を合わせて支えながら生きている。16歳の息子とたわいもない話をしながら過ごす時間が、今は何よりの幸せだ。
*レストラン経営 ハラルド・ロイボルド(59歳)
ハラルドが経営するのは、一日に500~600食を出すという老舗レストラン。彼の両親が50年以上前に始めた、ウィーン料理の店だ。ハラルドは幼い頃から、両親の背中を見て育った。昔はこの店の上のアパートに住んでいたから、忙しい両親に代わって朝は従業員が起こしてくれた。自分が両親から受け継いだ店と心を残してゆきたい。子供の居ないハラルド。彼は若い見習いたちを積極的に育てている。ハラルドは、両親が築いてきた店をこれからも守り継いでいく。もし自分がいなくなったとしても、ここで育った誰からまたこのレストランを続けていく日がくるだろう。