ヨーロッパ路地裏紀行

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[ ベルギー ]  ブリュッセル ワーブル通り






旧市街の東のはずれ。トラムが行き交う交差点をまたぐようにして走る「ワーブル通り」は そもそも郊外の森から町へと木材を運ぶために作られた、長い道だ。 交差点を挟んで南側は商店街、反対側は瀟洒な住宅が立ち並ぶワーブル通り。 この通りは、ふたつの顔を持っている

*生地屋店長 アンヌフランス・ファン・ベムストさん(43歳)

交差点を挟んで通りの南側の商店街にある生地屋。ここの店長を務めるのがアンヌフランスだ。 いつも明るいアンヌフランスは店のオーナーに気に入られ、10年ほど前から この店の店長を任されている。生まれ育ったのは別の場所だが、今ではここがホームグラウンド。商店街組合にも参加し、色々なイベントの企画にも知恵を貸している。通りがいつもにぎやかであってほしいと願っているキャリアウーマンだ。 でも実は、おばあちゃんが大好きな心優しい女性。毎日、昼と夜の電話を欠かさない。 「どこかに旅行をしたいとはあまり思わないわ。毎日の小さな幸せで十分。お客さんが作ったものを見せてくれたり…。そんなことがあれば、お天気が悪くてもいい気分よ。」

*リンダ・ブーンスさん(58歳)

交差点の北側の住宅街で生まれ育ったリンダ。この通りは彼女にとって、まるで"巣"のような場所だ。幼馴染の家もそこかしこにあるし、知り合いも多い。 何より、いろんな思い出がこの通りには詰まっている。 愛する亡き父の在りし日を語ってくれる隣人がいる。離婚をして、通りへと戻ってきた時も、誰もが温かく迎えてくれた。そして離婚後に一緒に過ごしたパートナーとの思い出もたくさんある。 彼は、ほんの1年半前に天国に召されたばかりだ…。 楽しいことも、悲しいこともいろいろあったこの通り。リンダはこれからもここで生きていく。