ヨーロッパ路地裏紀行
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[ ローマ ] ウルバーナ通り(モンティ地区)
第12回の舞台はローマ、モンティ地区にあるウルバーナ通り。職人の多く住む通りとして知られ、大工の守護聖人聖ヨゼフが祀られる教会では、毎年大工の祭りが開かれる。
*アンティーク家具修復職人 ジュゼッペ・パリージさん (73歳)
元銀行員で、20年前に突然脱サラして家具職人に転向したジュゼッペ。人生の後半での決断だったが、職人としての生活は銀行員時代の数倍も充実したものだった。共に仕事をする仲間もできた。息子のステファノだ。実はステファノは義理の息子だが、実の息子と同じように接してきた。ジュゼッペがステファノに説教をすることはない。自分が日々重ねて来た「きちんとやること」を見ていてくれれば、それだけで良い。
共に働くようになってから10年。2人は血縁を超えた家族となっている。
*時計修理職人 ダニエーレ・メレッリさん(42歳)
通りの真ん中に、つたのからまる小さな時計屋がある。この店の主人はきれい好きで落ち着いたダニエーレと、整理整頓が苦手で自由な性格のフランチェスコ。2人は親類でも兄弟でもなく、友達同士。元々違う店で時計の修理職人として働いていたが、いろいろあって今は一緒にやっている。
趣味も性格も全く違う2人だが、心の奥でお互いのことを尊敬しあっている。どちらが稼いだとか、つまらないことでいがみあうことは皆無だ。
ダニエーレの夢は、今は賃貸の店をいつか自分で買い取ることだ。良き同僚で友達であるフランチェスコと、末永くこの通りで時計の修理をしていきたいと思っている。