ヨーロッパ路地裏紀行

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 [ ローマ ]  ゴヴェルノ・ヴェッキオ通り(パリオーネ地区)






第11回の舞台はローマ、パリオーネ地区にあるゴヴェルノ・ヴェッキオ通り。通りの名前は「古い政府」という意味で、昔から市民の意見を表明する活動の場として知られた。庶民的なトラットリアや古着店、アペリティーボができるエノテカなどが軒を連ねており、観光客はもとよりローマ市民も足しげく通う賑やかな通りだ。

*古着商 オメーロ・ダーファノさん (59歳)

ゴヴェルノ・ヴェッキオに生まれたオメーロ。「世界に一つしかない」という古着の魅力に取り憑かれ、屋台から始めて念願の自分の店をこの通りに構えた。毎日の仕事は通りに椅子を出し、とりあえずタバコを吸うこと。そうすると次第にオメーロの周りには客や近所の人が集まって来る。何よりオメーロが好きなのはこの通りの雰囲気だという。人がいるからこそ、通りができる。通りの中で変わってしまったものはたくさんあるが、オメーロの周りに流れる空気はいつの時代も変わらない。

*トラットリア経営 ピエートロ・サルヴィさん(62歳)

通りの真ん中に古いトラットリアがある。ジーノ・エ・ピエートロ。アブルッツォ州出身のピエートロが30年前に作った店だ。人口30人ほどの小さな村に生まれたピエートロにとって、ローマは憧れの大都会。14歳で一大決心し、ローマでウエイターのアルバイトから始め、接客や料理、一つずつ覚えてきた。憧れのローマ、しかも中心部のゴヴェルノ・ヴェッキオに自分の店を構えてからは嬉しくて、以来休みの日でも一日1回は寄らないと気が済まない、大切な居場所になった。そして開店以来30年毎日通ってくれる92歳の常連客もできた。「自分の健康はこの店が支えてくれている」と客は語る。
今や2人の子どもと孫に恵まれたピエートロ。いま、子ども達が店を継ぐべく張り切っている姿を見るのが、何よりも嬉しい。