ヨーロッパ路地裏紀行
バックナンバー
[ マドリード ] バルキージョ通り
第五回の舞台はマドリード、チュエカ地区にあるバルキージョ通り。ここは昔からマドリードの文化や芸術を育んできた老舗の通り。通りを入ったところにある広場にはかつてサーカス小屋があり、マドリード中から人々が訪れていた。1980年代には音響機器の専門店が増え、音響通りと呼ばれたこともあった。時代は変わり、今はおしゃれなブティックやエステなど、流行の店が多い。昔も今もここは人が集まってくる路地だ。
*ミニカー店経営 グスタボ・ヒメネスさん(40歳)
バルキージョ通りの入り口、広場の近くに人々がつい足を止めてショーウィンドウを眺める店がある。ミニカーの専門店だ。店に入ると髭のお兄さんが迎えてくれる。グスタボ・ヒメネス。8年前に兄が始めた店を兄弟で経営している。
店に来る客の多くは年配の男性。自分がかつて乗っていた車、子どものころ父が乗っていた車・・・客はミニカーを手にとって眺めながら、自分の人生を振り返る。
ここは人それぞれの思い出が見つかる店だ。グスタボはそんな感動の瞬間に何度も立ち会ってきた。それがここに店を構える楽しさでもある。
*パティスリー勤務 ベアトリス・ガルシアさん(20歳)
バルキージョ通りの一番奥にマドリードで人気のパティスリーがある。ポムシュクレ。店内には毎朝作り立てのスイーツが並ぶ。接客をしているのは20歳の女の子、ベアトリス・ガルシアだ。週に6日、朝の8時~午後3時までここで働いている。半年前、北に200キロ離れたブルゴスの街から、ある夢を抱いて、単身マドリードにやってきた。たまたま客として入ったこの店を気に入り、働かせてほしいと頼み込んだ。マドリードに来て半年、パティスリーでの仕事がベアトリスの暮らしを支えている。
実はベアトリスがマドリードに来たのには理由がある。子どものころからずっと抱えてきた舞台俳優になるという大きな夢。その夢に向かっての第一歩をベアトリスはバルキージョ通りで歩み始めたところだ。