ヨーロッパ路地裏紀行
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[ ベネチア ] ミセリコルディア通り
第三回の舞台はイタリアのベネチア、その北に位置するカナレッジョ地区にあるミセリコルディア通り。運河沿いに面した水の都ならではの通りだ。
*衣装デザイナー ステファノ・ニコラオさん 58歳
ステファノは、世界が注目する衣装デザイナー。最近では、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の衣装デザインも手掛けた。
少年の頃は俳優になりたかった。両親の反対を押し切って、中学卒業後、芸術専門学校に進んだ。次第に舞台美術や衣装に興味が移り、23歳でトリエステの劇場の芸術監督の地位に上りつめた。
1980年、故郷ベネチアのカーニバルが復活することとなった。中世風の華やかな衣装が特徴のカーニバル。だが当時、ベネチアで衣装に詳しい人はいなかった。ここにはチャンスがある!ステファノはそんな夢を抱き、故郷のベネチアでアトリエを開くことを決意する。そうして40年近く。「若い頃、夢見ていた自分が、ここにいる」彼は自分自身の現在をそう語る。若いスタッフとともに今も精力的に働くステファノ、彼の娘もアトリエでともに働くようになった。
*ボートの修理工場経営 マウロ・ゲラルディさん 52歳
マウロの父はボートを使った配送業者だった。幼い頃、父はよくマウロを乗せて、ベネチアのあちこちへ荷物を配ったものだ。そんな父の影響で、マウロは若い頃から船に関する職業につきたいと考えるようになった。ずっと造船所でボートのエンジンなどのエンジニアを勤めてきた。自分の修理工場を持ちたいという夢を実現したのは12年ほど前。ボートの修理やエンジンの発注、夏の季節を前に工場は今、大忙しだ。
実はこの造船所を経営するきっかけとなったのは、彼の息子の存在があった。海と船が大好きな青年だった。息子とともにこの工場を運営していく予定だった。しかし、直前、彼は不慮の事故で亡くなってしまった…。「止まると動けなくなってしまいそうだから、ずっと忙しくしているんだ…」そんなマウロの一日を追う。
水の都ベネチアの北。幼いころから抱いた夢を現実のものにした二人の男とその家族の物語を情緒溢れる風景とともに描きます。