中国神秘紀行

天山シルクロードに消えた二つの王国の謎を追う　～新疆ウイグル～

今回は中国の北西部、新疆（しんきょう）ウイグル自治区を旅します。新疆ウイグルは古来シルクロードの交易ルートとして栄えてきた所です。シルクロードの背骨と呼ばれる天山山脈を南北に挟んだ、天山北路から天山南路へと向かいます。

旅の出発点は天山北路で緑豊かな草原が広がるナラティ空中草原です。天山山脈から注ぐ豊富な水が潤す広大な草原には、今から約２０００年前に栄えた王国がありました。烏孫王国（うそんおうこく）です。天山北路で１９万ともいわれる兵力を持ち、シルクロードの覇権を握っていた王国もやがて消えて行きました。ナラティ空中草原では、かつての烏孫王国の様子を再現した催しが行われています。一体、どんな国だったのでしょう？
ナラティ空中草原から天山山脈を南へ越え、天山南路を目指します。天山山脈の南北を結ぶルートは、古くから交易ルートの一つとして栄え、今も荷物を満載した車の列が絶えることはありません。天山山脈を越え、天山南路に達すると風景が一変します。天山山脈の北は緑豊かな草原が広がっていましたが、南は荒涼とした大地が続くのです。そこに残された天山山脈越えの古道は、絶壁に覆われた険しい道でした。
天山南路のオアシスであり、シルクロード交易の中継地として古代より栄えてきたのがクチャの町です。クチャには約２０００年前から栄えた仏教王国、亀茲王国（きじおうこく）がありました。今はなき王国の足跡を残すキジル石窟を訪ねます。そこには仏などを描いた数多くの壁画が残されています。中には優雅に音楽にのせて踊る飛天の姿もあります。その壁画をもとにかつての亀茲王国の舞を復活させようとしているのが、クチャの「新疆亀茲歌舞団」です。歌舞団の盛大なパーティを取材しました。ウイグル族伝統の料理や踊りが華やかに登場します。
かつての亀茲王国は、音楽と踊りに満ちた楽園だったのです。かつてシルクロードに流れた音楽を求め、伝統楽器を作り続ける男性に出会いました。彼が奏でる楽器の音色は、かつて北方民族や歴代の中国王朝に翻弄されながら滅びていった、亀茲王国の運命を物語るかのように哀愁に満ちているのです。

天山山脈を挟んで栄えた二つの王国。そして、今も残されたシルクロードの遺跡と人々の伝統的な暮らしは、かつての王国の姿を彷彿とさせるロマンに溢れているのです。

初回放送：2010年12月24日