中国神秘紀行
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遣唐使 魅惑の町を訪ねて ~浙江省~
今回は、中国東海岸に位置する浙江省(せっこうしょう)を旅する。そこは、かつて命がけで中国文化を日本に持ち込もうとした遣唐使が訪れた地域でもあった日本とも関わりの深い土地である。
仏教のひとつ天台宗もここが原点である。その天台宗を日本に伝えた僧侶、最澄(さいちょう)の足跡を訪ねながら、彼ら遣唐使が命がけでここを訪れ、また彼らを魅了したものとは何か探し求めてゆく。
寧波(ねいは)かつては明州(めいしゅう)と呼ばれたこの地は、交易や遣唐使の港として栄えてきた町である。ここの魚市場は、地元の魚介類が毎日のように水揚げされ大変な活気を見せる。ぜひ立ち寄りたいのが港の屋台が立ち並ぶ通りだ。特にカニ、アサリ、シャコ、エビ、カブトガニを使った料理は絶品だ。価格も安く、新鮮でおいしいと評判。当時、遣唐使の一陣も荒海を乗り越え、寧波の新鮮な海鮮料理に舌鼓を打ったことであろう。
町に出向くと観音像に祈りを捧げる女性たちに出会った。漁師の妻たちだ。大海に漁に出る男たちの安全を祈願している。寧波は、仏教が地元の人々に深く浸透している。寧波の普陀山(ふださん)は、中国仏教四大聖地のひとつでもある。静かな寺のたたずまいは、心をなごませる。
もうひとつ交易と仏の道として日本とも関わり深い港町を訪ねた。
台州(だいしゅう)である。ここの龍興寺(りゅうこうじ)は、最澄が寧波の後に立ち寄り天台山へ向かうきっかけとなった場所である。台州は、唐の時代から清の時代まで、この浙江省の中心となった都で歴史を感じさせる建造物も多く町並みもかつての台州の名残りがある。唐代の城壁、屋台の野菜料理、のどかで古に心かよわせる情緒にあふれているのだ。
いよいよ最澄が、あこがれた天台山に向かう。ふもとの町は、天台山に向かう巡礼者であふれている。雲海の続く山並み、幽玄な世界に包まれた天台山の情景に圧倒される。ここの国清寺(こくしんじ)は、宿坊があり伝統の精進料理を楽しめる。豆腐と野菜を主体とした素朴な料理だが、なんとご飯がおいしいと宿泊者に人気だ。日本でも昔よく見られた薪を使った釜だきでご飯をたく。大きな釜で炊き上げられたご飯と精進料理。最澄も味わったかもしれない。
最澄は、天台山で旅は終わらなかった。彼が、向かったのが紹興だった。そう、日本人もなじみ深い紹興酒で有名な地。最澄は、峰山道場という寺で密教の経文も手に入れ、いわば天台密教の原点をここでようやくつかんだのである。紹興は、美しい水にも恵まれた地。紹興酒は、「黄酒」と呼ばれて、その伝統的な製造方法は昔のままである。黄酒博物館では、その伝統製造過程を誰でも楽しむことができる。また、地元の庶民しか知らない人気の紹興酒の店を紹介する。紹興の人々は、朝と晩酌に紹興酒を欠かさない。
そのうまさの魅力とは?
かつて遣唐使の歩んだ道は、今も歴史と文化とグルメに育まれたとても魅力ある町が残っているのだ。
初回放送:2008年7月18日