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ストーリー

11/22(火)の放送
チシタリアD46

チシタリアD46

チシタリアとは、終戦直後のイタリアに生まれた、夢の大きさではフェラーリやアルファにも決してひけを取らない、レーシングカーとスポーツカー専門の小さなメーカーの名前である。その魅力的なクルマたちは、これまで何度も我々をとりこにしてきたのだが、今回はじめてご紹介することになったD46というこれまた小さなフォーミュラは、これこそがチシタリアの原点と言うべきものなのである。

ピエロ・ドゥジオ

チシタリアという会社を戦後いち早く興した実業家ピエロ・ドゥジオという人物は、若いじぶんはサッカー選手としても一流のスポーツマンであり、また、かなり腕の立つレーシングドライバーでもあった。そんなドゥジオは戦時中、イタリア軍に制服を納めることで莫大な利益を手中に収めるのだが、そのすべてをつぎ込んでレーシングカーづくりに没頭することになるのだった。ドゥジオの計画は初めから実に壮大だった。まず手始めに、量産車フィアットのエンジンや足まわりをベースにして小型フォーミュラカーをつくり、これで戦後の貧しいイタリアを元気づけようというものだった。

フロントエンジン

フィアットの小さな4気筒エンジンは、当時のレースカーの流儀でかなり後ろよりに積まれている。これに加えてドライバーズシートはまさにデフの直前ときているから、重量配分は確実に後ろ寄りなのである。さてこのエンジン。OHVのままながらヘッドはアルミのチシタリア製に換えられ、圧縮比も上がっている。特筆すべきは潤滑がドライサンプに変えられていることで、そのための立派なオイルタンクがスカットル上に置かれている。こんなに小さなフォーミュラにも、基本設計を任されたダンテ・ジャコーザは妥協を許さず、重心を下げるためにエンジンを低く積むことにこだわったのだ。