世界の名画 ~美の迷宮への旅~
ストーリー
→ バックナンバー
"幸せの画家"その知られざる素顔
ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」
今日の一枚は印象派の巨匠ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」。印象派時代の最高傑作との呼び声が高い作品です。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」とは19世紀後半、パリ・モンマルトルの丘の上にあったダンスホール。ルノワールは庶民の社交場を舞台に人生の喜び、幸せな瞬間を煌びやかな色彩で画面いっぱいに表現しました。
しかし、同時代に同じダンスホールを描いたゴッホやロートレックの作品に華やかさはありません。陰鬱で重々しい雰囲気が画面を覆い尽くしているのです。
それらは、ルノワールが描いた華やかな作品とはまるで正反対。何故これほどまでに違うのでしょうか?
当時のフランスは1900年のパリ万博に向け、都市開発を急速に進められていました。その一方、モンマルトル界隈には娼婦宿やキャバレーが建ち並び、パリの街は繁栄と暗い影がまみえる、混沌とした雰囲気に包まれていました。ルノワールはメランコリックで生々しい現実には一切触れず、華やかで活気に満ちた風景だけを描いたのです。その背景にはかけがえのない友情とそれを引き裂いた、知られざる悲劇がありました。
さらに、秋の気配、深まるパリを散策。ルノワールが作品に描いた、19世紀末の面影が残るパリを巡ります。
パリ北部の街モンマルトルではルノワールがアトリエを構えた場所へ。静かな庭に差し込む木漏れ日には、自然の光を捉え幸福感を表現した、彼の光の表現の秘密がありました。
また、印象派の島とも言われた、セーヌ河の中州にあるシャトゥー島を訪れ、ルノワールも楽しんだ船遊びを体験します。
悲しみや苦しみを封印し、誰もが幸福を味わえる絵を描き続けたルノワール。人生を懸けて人間の生命力を表現し、幸福という人間の根源の価値を描き続けた、"幸せの画家"の真実に迫ります。