世界の名画 ~美の迷宮への旅~

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ストーリー

背景を主役にした男 
アルトドルファー 「アレクサンドロス大王の戦い」

番組名

1529年、南ドイツでそれまで誰も見たことのないような異色の絵画が描かれました。地表を埋め尽くす軍隊、その背後に聳え立つ山と彼方に広がる海。壮大なパノラマがまるで天空から眺めているような神の目線で描かれています。作品のタイトルは「アレクサンドロス大王の戦い」。ギリシャからインド西部に至る大帝国を築き上げた古代の英雄の戦闘シーンは、それまでにも何人もの画家によって繰り返し描かれてきました。しかし彼らは、主役であるアレクサンドロス大王と敵の王が、ひとめで主役であることがわかるように描いたのです。対してこの作品では、二人は戦場のただ中に置かれ、よく見なければどこに描かれているのかわかりません。それまでは主役の背景として描かれてきた戦場の風景そのものが、この絵では主役に据えられていたのです。
作者はアルトドルファー。西洋絵画で初めて風景画を描いた画家です。現在では風景画は非常にポピュラーなジャンルとなっていますが、西洋絵画史上に風景画が現われるのは、その誕生から300年近く後のことでした。それまでは、風景は宗教画の背景にほんの少し描かれるだけのもので、決してそれ自体独立したモチーフにはならなかったのです
西洋絵画史の新しいページを開いたアルトドルファーとは、どんな画家だったのでしょうか。その足跡追って、彼が若い頃に作品を制作したオーストリアのザンクト・フローリアン修道院や、生涯の活躍の場、ドイツの古都レーゲンスブルクを訪れます。
また、「アレクサンドロス大王の戦い」の制作を依頼したヴィルヘルム四世が君臨したバイエルン公国の都ミュンヘンを訪れ、その豊かさを象徴する豪華絢爛な宮廷、レジデンツや、バイエルン公国のコレクションを収めたアルテ・ピナコテークの名画の数々をお楽しみいただきます。