世界の名画 ~美の迷宮への旅~
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光の表現を極めた男 フェルメール「牛乳を注ぐ女」
今日の一枚は「光の画家」フェルメールの傑作『牛乳を注ぐ女』。
明るい光が差し込む窓辺で女性が陶製の容器に牛乳を注ぎ込むという、素朴な日常風景が描かれています。ありふれた日常の一場面には劇的な表現はいっさい無いものの、静謐で気品漂う、不思議な魅力に溢れています。
見た者の心を捉えて離さない理由、それは緻密に組み立てられた構図、計算された形と色そして忘れてならないのがフェルメールの最大の特徴でもある「柔らかな光」。
彼は如何にして「柔らかな光」に辿り着いたのでしょうか?
今回はフェルメールの「柔らかな光」の秘密を探るため、中世以降の西洋絵画に見られる「光の表現の歴史」を紐解いていきます。
西洋絵画の歴史はまさに「光の歴史」。「モナ・リザ」「ラス・メニーナス」「夜警」といった世界三大名画も取り上げながら、フェルメールへと受け継がれる、光の系譜をご紹介します。
16世紀ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチは光を排除し、イタリアバロック絵画のカラヴァッジョは衝撃的な光と闇の対比で現実をドラマチックな世界に変えました。
さらに「夜の画家」と言われた、フランス古典主義のラ・トゥールや光と空気の革命を果たしたベラスケス、また「光の魔術師」レンブラントまでを網羅し、巨匠たちが生み出した光の表現を徹底的に紐解いていきます。
今回の地上の旅はフェルメールの人生に影響を与えた「光」を求め、彼の故郷、オランダのデルフトを探訪します。国土の大半が海面より低く、起伏の無いオランダの自然がフェルメールに与えた「柔らかな光」とは?
また彼の光を再現した「フェルメールの部屋」や当時から続く老舗レストランも訪れます。
何気ない日常を柔らかな光で優しく包み込んだフェルメール。素朴な風景を名画へと導いた、光の画家の神髄がここにあります。