世界の名画 ~美の迷宮への旅~
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世紀末パリを切り取った画家 ドガ 「スター、舞台の踊り子」
今日の一枚は19世紀の印象派の巨匠、エドガー・ドガの『スター、舞台の踊り子』。
「踊り子の画家」と称されたドガは踊り子が瞬間的に見せる躍動感をスナップショットの様に捉え、その一瞬に表れる人間の内面をキャンバスに描きました。
この作品には主席ダンサーを意味する、エトワールの称号を与えられた踊り子が軽やかに舞う姿が描かれています。
踊り子を真正面ではなく、上から見下ろすような大胆な構図はドガの特徴の一つ。
彼は楽屋や練習風景、舞台袖といった、普通なら出入りできない場面や普段見られない姿の踊り子を数多く描きました。
また、自然の光を追い求める他の印象派とは一線を画す存在だったドガは19世紀フラン
スの保守的な画壇に反抗しました。
新古典主義の巨匠アングルからデッサン力の重要性を学んだ彼は伝統を守りつつ、新たな境地へ辿り着こうとしていました。彼が目指したのは人間が躍動する一瞬の美しさと事実を美化することの無い、リアルな姿でした。
個性的な作風から孤独な戦いを強いられたドガの孤高の人生に迫ります。
そしてドガが過ごした19世紀末の姿を今に残すパリの街へ。
当時、産業革命により隆盛を極めた街は近代的な大都会へと変わっていきました。
市民が自由を謳歌し、街には酒場の役割を果たしたカフェが約3万件建ち並びました。
芸術家達を魅了した「アブサント」と言われるお酒を求め、パリ市内に唯一残る専門店を訪れます。
また、晩年のドガが足繁く通ったパステル画の専門店へ。ここでは晩年の彼を襲った絶望と希望を垣間みることができます。
19世紀末のパリに溢れる、華やかさと儚さをリアルに描いたドガ。
大都会に生きる人々を独特な視点で切り取ったドガの人生に迫ります。