世界の名画 ~美の迷宮への旅~

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ストーリー

三百年の眠りから覚めた女神 ボッティチェリ 「春」

番組名

とりどりの花が咲き乱れる花園に、ヴィーナスをはじめとする女神たちが集うボッティチェリの名作「春」。この絵が誕生する1482年頃まで、キリスト教世界では、異教とされるギリシャ・ローマ神話の神々が美術作品に大々的にとり上げられることはありませんでした。ボッティチェリはまさに、古代文化の復興を意味するルネサンスの象徴ともいえる画家だったのです。しかし、それほどまでに革新的なこの作品が広く世に知られるようになるのは、意外にも19世紀になってからのことでした。「春」は彼のもう一つの代表作「ヴィーナスの誕生」とともに、パトロンだったメディチ家の別荘で、300年以上もの間、人知れず眠りつづけてきたのです。
1445年頃、イタリア・フィレンツェの金細工師の家に生まれたボッティチェリは、初期ルネサンスを代表する画家フィリッポ・リッピの工房で絵を学びました。独立後、フィレンツェの実質的支配者として君臨した名門メディチ家の支援を得て、宗教画や神話画の傑作を次々と生み出していきます。しかし、50代にさしかかった頃、禁欲的な政治思想に感化されて画業から遠ざかり、晩年は貧困にあえぎながらこの世を去りました。
そんな彼が絶頂期に手がけた「春」は、その解釈について今も多くの論議を呼んでいるミステリアスな作品です。番組では、画家の人物像に迫るべく、ボッティチェリが生涯の大半を過ごしたフィレンツェで、ゆかりの地を探訪します。そして、描かれた花を手がかりに、「春」の謎解きにも挑みます。
さらに、もう一つの旅では、フィレンツェを州都とするトスカーナの「食」にスポットを当てます。中世の料理に詳しいシェフが営むレストランで、メディチ家の食卓を再現してもらうほか、14世紀からワインを造りつづけているフィレンツェ郊外の老舗ワイナリーを訪問。ルネサンスの時代に進化を遂げた、中世イタリアの食文化について探ります。