世界の名画 ~美の殿堂への招待~
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知られざる美の都をゆく もうひとつの印象派 ベルギー ゲント美術館
“欧州の美の都”というと、どこを連想されますか? フィレンツェ? それともパリ? 実はこれらの町以外にも、美の都はあるのです。
今回の舞台、ベルギー第三の都市、ゲントもそのひとつです。古くから貿易と毛織物産業で栄えてきました。16世紀にはヨーロッパの大半を支配した、神聖ローマ帝国皇帝カール五世もこの地の出身です。
町の旧市街には、運河がゆったりと流れ、石造りの教会やレンガ造りの建物が並びます。そして、中心に建つ聖バーフ大聖堂には、観る者誰しもが息を呑まずにはいられない、祭壇画が収められています。フランドル絵画の頂点に立つ、ファン・エイク兄弟による「ゲント祭壇画」、史上最古の油絵です。
それまでの絵にはなかったリアルな質感、髪の毛一本一本まで描きこむような細密描写。後に続く画家達は、このような絵がどうやったら描けるのか、その秘密を探ろうとしました。これによって、西洋絵画の流れは油絵中心へと大きく変わっていったのです。ゲントこそが、油絵の故郷だったのです。
そんな作品を戴くゲントの郊外に足を伸ばせば、小さな美術館やギャラリーが次々と現れます。そこに飾られているのは、ベルギー独自の印象派絵画。19世紀後半、次々とゲント郊外に移住してきた画家達が描いたものです。
なぜゲントは、これほどまで芸術と結びついているのでしょう? 謎を解き明かす鍵は、街が誇るゲント美術館にありました。ベルギーで一番古いこの美術館は、国立美術館に先立って作られた、珍しい地方美術館です。その優れた絵画コレクションの背景に隠されている、美術館設立の秘話を読み解き、さらにゲントと日本の意外な結びつきもご紹介します。