世界の名画 ~素晴らしき美術紀行~
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パリ…印象派誕生前夜
時代と闘った画家たちの光と影
1863年、絵画が変革期を迎えていたパリで、時を同じくして2枚の裸婦像が描かれました。一枚はアレクサンドル・カバネルの「ヴィーナスの誕生」。古典絵画の伝統を受け継ぐこの作品は、国の公募展サロンで大好評を博し、皇帝ナポレオン3世に買い上げられます。この成功により、カバネルは芸術アカデミー会員に選出され、画壇のトップに躍り出るのです。
もう一枚はエドゥワール・マネの「オランピア」。2年後のサロンに出展されたこの作品は、絵画の約束事を破って生身の人間の裸体を描いた事や、西洋絵画の伝統から逸脱した平面的な描き方が非難され、作者マネはフランス絵画を破壊する危険な画家と見なされてしまいます。
運命を大きく分けた二人の画家。実はその生い立ちも非常に対症的でした。カバネルは地方都市の貧しい職人の家庭に生まれ、11歳の幼さで美術学校に入学。画家として身を立てるために、ひたすらデッサンや古典絵画の模写に打ち込み、基礎を身に付けました。そしてブルジョアの嗜好に迎合する絵画を描き続けて、一躍、人気画家となったのです。
一方、マネはパリのブルジョア家庭の出身。幼い頃からルーブル美術館の古典絵画に親しむとともに、美術の最新の潮流にも常に敏感でした。そんな彼は、厳格だった高級官僚の父への反発もあったのか、当時の画壇に真っ向から挑むような、センセーショナルな絵画を次々と制作していくのです。
印象派誕生前夜、パリで火花を散らした二人の画家。美術史の大きなうねりは、二人の闘いに、皮肉な結末をもたらすことになります。
番組では二人の故郷を訪ね、象徴主義の詩人ランボーゆかりのカフェもある、パリ中心部の文教エリア、サン・ジェルマン・デ・プレ地区と、フラミンゴの飛来地でもある"フランスで一番住みたい街"、南フランス、プロヴァンス地方のモンペリエを巡ります。