世界の名画 ~素晴らしき美術紀行~

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ストーリー

世界遺産トレドの旅
神秘と祈りの画家エル・グレコ

世界の名画 ~素晴らしき美術紀行~

「スペインに一日しかいないなら、迷わずトレドに行け」。19世紀以来、そんなフレーズと共に語られ、世界中の人々を魅了してきた古都トレド。歴史の中で幾度となく首都となったこの町には、中世のエキゾチックな建物が数多く残されており、現在は歴史地区全体が世界遺産となっています。
しかし人々は、街並みだけを目指してここに来るわけではありません。実は「トレドを語ることは、ある画家を語ることであり、逆もまたしかり」と言われるほど、町に深く結びつけられた画家がいるのです。十六世紀に神秘的な宗教画を数多く描いたことで知られる、スペイン三大巨匠のひとり、エル・グレコです。彼と町の知られざる物語を秘めているのが、今回、ご紹介する「オルガス伯爵の埋葬」。所蔵教会の門外不出で、トレドに来ることでしか観ることのできないエル・グレコ筆生の大作です。
 エル・グレコというのは実は「ギリシャ人」という意味の呼び名で、本名はドメニコス・テオトコプーロス、1541年にギリシャのクレタ島で生まれました。始めイコンと呼ばれるギリシャ正教の宗教画家になった彼は、イタリアに渡ってルネサンスの巨匠たちに学び、宮廷画家になる夢を抱いて当時世界最大の帝国を築いていたスペインを目指します。
その頃エル・グレコの作風は、意外なことに非常に理知的でした。しかし彼が考え抜いて描いた自信作は、スペイン王の眼鏡に適わず、宮廷画家の夢は脆くも潰えます。そんな彼に門戸を開き、活動の場を与えたのは、スペイン・カトリックのいわば総本山が置かれていたトレドでした。そしてこの町で、エル・グレコの作風は次第に変わっていったのです。そこにはどんな物語があったのでしょうか。
トレドに残されたエル・グレコの神秘的な作品を巡りながら、彼の人生を追いかけます。さらに、トレドでしか見られないエル・グレコの意外な作品もご紹介します。