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神秘の惑星~地球の秘密 3 氷
私たちの星、地球。この宇宙でもたぐいまれなる惑星は、46億年の歳月をかけ、地表の景色を変え続け、生命を育んできた。このシリーズでは、地質学者のイアン・スチュアートが、地球を形作った自然の力を4つの切り口から紹介する。第3回のテーマは、「氷」。
氷はただの凍った水ではない。人類が地球に現れて以来、世界を形作る上で最大の役割を果たしてきたと言えるだろう。氷が誕生した氷河期以降、氷は大地を削り、時に自然の猛威を振るい、地球の気候を大きく変動させてきた。その軌跡をたどるため、アルプスの氷壁、カリフォルニア州ヨセミテ国立公園、ノルウェーのスバルトイス氷河、グリーンランドのヤコブスハブン氷河を訪れ、その残された数々の驚くべき現象に出会う。
そして、氷の力は人類の進化の道筋までも変えてきた。世界各地の氷が、地球温暖化により解け始めている今、氷は私たちの未来の鍵を握っている。
今回の地質学者イアン・スチュアートの旅は、アルプス山脈から始まる。完全に凍って氷壁となった滝をよじ登る彼の周囲に広がるのは、切り立った雪と氷の世界。氷河は誕生以来、大地の形を変えるほどの大きな力を見せつけてきた。氷河に削られてできた崖の中でも、特に素晴らしいのがカリフォルニアのエル・キャピタン。氷に磨かれた岸壁は、ロッククライミングの名所だ。
ではなぜ、氷が固い岩をも削れるような力を持っているのか? その強大な力の謎に迫るため、イアンはノルウェーのスバルトイス氷河へ。ここでは氷河の働きを中から見ることができるのだ。氷河学者ミリアム・ジャクソンと共に水力発電所のトンネルを進むと、氷河の最深部、氷と岩がぶつかる場所にたどり着く。トンネルの奥に待ち受けていたのは、幻想的なアートのような氷河内部の世界。氷に含まれる岩石の堆積物と、氷の持つ流動性が浸食作用を生み出したことが分かる。
グリーンランド、アイスバーグ・アレーでは、氷が気候にもたらした影響について探索する。氷は太陽の光と熱を反射することによって、気候を変化させてきた。氷が広範囲に広がっていた氷河時代には、かなりの量の太陽エネルギーが宇宙に反射されたため、地球の吸収するエネルギー量が減少し、不安定な気候となった。そして、その急激な変化に順応できた種だけか生き残ったという点において、氷は人類の進化を促したとも言える。
現在、地球の温暖化により世界中の氷河が解け始めている。最後に訪れたグリーンランドのヤコブスハブン氷河では、氷河の流れ去る速度が速くなってきている。コロラド大学のコンラッド・ステフェン教授は、その原因は、解けだした水が氷河の底に到達し、滑りやすくなっているためだと考えた。イアンは、教授の研究チームに同行し、氷河の表面の穴"ムーラン"からカメラを入れて撮影を試みるが、底まで到達できず、検証は次回にもちこされることになった。
氷河の旅を終えて、イアンは語る。「世界中の氷が溶けて崩壊し、氷が無くなるときがきたら、それは私たちの文明、地球が大きく変わる時なのかもしれない」。