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神秘の惑星~地球の秘密 2 大気
私たちの星、地球。この宇宙でもたぐいまれなる惑星は、46億年の歳月をかけ、地表の景色を変え続け、生命を育んできた。このシリーズでは、地質学者のイアン・スチュアートが、地球を形作った自然の力を4つの切り口から紹介する。第2回のテーマは、「大気」。
大気は目に見えないものだと思っていないだろうか? だがそれは大きな間違いだ。大気はさまざまな形で私たちの目の前に姿を現し、存在の証しを地球上に刻み続けている。その現象の数々をとらえた映像は、まさに驚きの連続だ。そしてそこから分かってくるのは、大気が矛盾で渦巻いているということ。気候を生み出す大気は、地表の形を変えるほどの強大なパワーを持つ反面、とても繊細。生物に酸素を供給し、宇宙の有害物からも守ってくれている。そんな私たちの生存に必要不可欠な大気に、今、大きな危機が訪れている…。
今回の地質学者イアン・スチュアートの旅は、大気圏見学ツアーから幕を開ける。超音速のジェット機が雲を切り裂き、あっという間に対流圏を抜け、高度15キロの成層圏へ。頭上に広がる暗い青色をたたえた空は、はるか彼方の宇宙をすぐそこに感じさせる。さらに、成層圏からのダイブ、空の上のサーフィンと驚がくの映像体験へ。大気が織りなす、美しくも荒々しい気象現象の数々を目の当たりにする。空に打ち寄せる大波のように、オーストラリアに浮かんだ地球最大の雲。アンデスの有名な稲妻は、見る者を圧倒。アリゾナで見た、大きくうねる曲線のしま模様が描かれた岩石は、風が造り上げた自然の巨大彫刻だ。
46億年前、地球が誕生して間もなく生まれた大気には、酸素は存在していなかった。それを変えたのが、20億年ほど前に地上に現れた原始生命体ストロマトライトだ。ストロマトライトは、微生物が堆積して岩石状になったもので、初めて光合成を行って酸素を放出した生命体。現在でもオーストラリアの海岸に群生している。今日の大気は数十億年をかけて、生物と見事なバランス関係を保ちながら作られてきたものなのである。
しかし今、そのバランスが人間の活動によって脅かされている。シベリアの永久凍土に気候災害の引き金が眠っていると言うイアンは、ある実験を行った。それは、凍った湖面に穴を掘り、火を近づけるというもの。すると、なんと湖面のあちこちで氷から炎が噴き出した。氷の中のメタンガスが引火したのだ!
大量のメタンガスが埋まっている広大なシベリアの永久凍土。メタンガスの温室効果は、二酸化炭素の23倍だ。地球温暖化の影響でシベリアの永久凍土が解け、大量のメタンガスが放出されると、温室効果はますます進み、気候に劇的な変化をもたらすだろう。
すでにシベリアの永久凍土は解け始めている。今まさに地球に危機が訪れようとしているのだ。