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ストーリー

密着!知られざる 野生のサルたち
ヒヒ~女王の権威

著名な霊長類学者シャーロット・ウーレンブロックが、人間に最も近い4種類の霊長類を至近距離から観察し、その生態を解き明かしていくシリーズ。今回は、タンザニアのミクミ国立公園でヒヒの群れを観察し、彼らの生活を追体験する。
ヒヒの社会は厳格なヒエラルキー(階層的に秩序づけられたピラミッド型の組織の体系)を持つ女系社会であり、その順位は血統によって決まる。ヴァランバ群の女王キトヴと娘のチェレワが絶大な権力を振るう一方で、最下位のムウェンジは絶対服従の厳しい生活を強いられる。
オスの生活はさらに過酷だ。彼らは権力をめぐって一生戦わなければならない。折しも観察中、よそ者のオスが群れに侵入し、第一位のオスのエバンダーと死闘を繰り広げる。
その後、シャーロットはサバンナを移動する群れの生活に密着し、その過酷さに舌を巻く。一般的にはどう猛なイメージの強いヒヒだが、その姿はまさに人間社会の原点を表しているかのようだった。

今回、タンザニアのミクミ国立公園でヒヒの群れと行動を共にし、彼らの生活を体験する。密着するのは80頭から成るヴァランバ群。ヒヒはどう猛なイメージがある一方、厳格なタテ社会の中で暮らしている。完全な女系社会であり、順位は血統によって決まる。
女王キトヴと、次期女王となる娘のチェレワが絶大な権力を振るう中、最下位のムウェンジはつら生活を強いられていた。彼女はチェレワに子供を殺されても逆らうことを許されない。
しかし、さらに過酷な生活を送るのがオスである。血筋で順位が決まるメスと違い、オスの地位は不安定で、一生権力争いを続けなくてはいけない。観察期間中にも、オスの第一位、エバンダーのすきをついて、よそ者のスカーが群れに侵入。発情期を迎えたチェレワにスカーが近づいた時、戦いのひぶたが切って落とされた。エバンダーとスカーは死闘を繰り広げ、共に大きなけがを負う。 シャーロットは緊張感漂う群れに同行し、気温40度にも達するサバンナを10キロ近く移動する。膨大な消費カロリーをまかなうため、ヒヒは植物や動物の死がい、未消化の植物の種子を含んだゾウのフンなど何でも食べる。また、ヒヒは2日間水を飲まなくても平気だという。
人間社会の原点を思い起こさせ、過酷な環境を懸命に生き抜くヒヒ。そんな彼らが好奇心いっぱいの目で撮影チームに近づく姿を見て、シャーロットは思わずこう口にする。
「彼らを好きにならない人なんて、いる?」