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地中海 6つの旅 ~大地の歴史をさぐる~
第5回 水と文明
大地の下で働く地質学的な力に着目して、地中海沿岸の歴史や文化を見直し、謎を解き明かすシリーズ。第5夜は、地質学という新しい観点から水と文明の関係をひもといていく。人類にとって、水は海上でも陸上でも恐ろしい敵だったが、それを支配しようと奮闘することで文明が発達してきた。ローマ帝国の繁栄と滅亡にも、水が密接に関わっていたというイアン・スチュアートの説は興味深い。
イアンは、ケーキとコーヒーを使って石灰岩の性質を説明してみたり、桃を使って地球の内部構造や地磁気について説明したり、初歩的な羅針盤を自ら作ってみたりと、地質学をわかりやすく紹介している。
はるか昔には神々のなせる業だと信じられていた自然現象が、科学的に理解されるに至った道筋をたどる。
地質学者のイアン・スチュワート博士が、私たちの生活に欠かせない水と文明の関係に迫る。
地中海地方では、人類と水のせめぎ合いがあり、水を制したものが繁栄を手にしてきた。水の管理には、大地の地質学的な営みが深く関わっている。
今から1万年ほど前、氷河期が終わり、地中海の水位はぐんぐん上昇していった。それに伴い、黒海地方では広大な地域が水没することになったが、石器時代の人々は災害を事前に察知し、標高の高い周辺の地域に逃げ延びた。 海に囲まれた人々は、海を越えて旅をする必要に迫られた。やがて後悔は貿易の重要な手段となり、海を制するものが繁栄を手にすることになる。航海術も、中国から羅針盤がもたらされ、飛躍的に進歩する。地磁気と磁鉄鉱(強い磁性を持つ鉱物)を利用した羅針盤も、地質学のたまものだった。
人類は海だけではなく、陸上での水もコントロールする必要があった。古代ギリシャ人は、石灰岩の台地にできるすり鉢状の窪地・ドリーネを利用し、水脈を調べ、洪水を防いだ。
古代ローマ人は、水を最大限に利用し繁栄を築いた。しかし商業の中心地として栄えていたエフェソスでは、木を伐採し過ぎたことが災いし、川によって運ばれた土砂が、港を沼地に変えてしまった。港町としての機能を失ったばかりか、沼で蚊が大発生し、マラリアを蔓延させる。これと同じことが各地で起こり、ローマ帝国衰退の一因となった。