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地中海 6つの旅 ~大地の歴史をさぐる~
第4回 信仰と科学
大地の下で働く地質学的な力に着目して、地中海沿岸の歴史や文化を見直し、謎を解き明かしていくシリーズ第4夜は、信仰と科学をテーマに送る。
古代都市ヘリケの消滅、コンスタンティヌスが天空に見た十字架など、神話や伝説に語られている現象が、地質学者イアン・スチュワートによって、鮮やかに科学的に説明されていく。
はるか昔から、人々は地球上で起こる現象を何とか説明しようとしてきた。神話もまたその時代の真実である。そして時代を経て新しい発見があるごとに、その真実が一つ一つ覆されてきた。1970年代前半までは、地質学的な営みは常に極めてゆっくり進むというのが定説だったが、70年代後半になって恐竜絶滅の原因として隕石衝突説が唱えられ、劇的な変化も起こりうるという新しいシナリオが登場する。「現在の定説もまたいつ覆されるかわからない。地質学は流動的なものだ」と語るイアン。 イアンのカラダを張った進行ぶりも、このシリーズの見どころの一つ。今回も18世紀の科学者の実験をバーベキューで再現したり、大陸移動説を自らの体を動かして実演してみせたりと大活躍。
はるか昔には神々のなせる業だと信じられていた自然現象が、科学的に理解されるに至った道筋をたどる。
古代ギリシャでは、多くの神々が地球を支配していると考えられていた。ギリシャ神話では、古代都市ヘリケは、ポセイドンの怒りに触れ、一夜にして海に沈められたとされている。しかし現代の地質学から見ると、ヘリケを通る断層で地震が起き、街が海に滑り落ちたと推測できる。
古代ローマ帝国にキリスト教を広めるきっかけとなったのも、地質学的な現象だった。4世紀、皇帝の座をめぐる戦いの前夜、コンスタンティヌスは、天空に輝く十字架を見て勝利を収めた。コンスタンティヌスはこれをキリストの啓示と受け止めたが、現在では隕石の衝突だという説が唱えられている。これ以降、キリスト教は西洋社会に広まっていき、ただ一人の神キリストが地球を創造し支配しているという、キリスト教的世界観が主流となった。
しかし、18世紀に起こったポルトガルの大地震をきっかけに、「神がこのようなことをするはずがない」という考えが現れ始め、地球の営みを科学的に解明する試みが始まる。
19世紀には、地層と化石の関係から、地球が聖書の記述よりもはるかに古い歴史を持つことが明らかになり、20世紀に入ると大陸移動説が発表され、地質学的な現象についての理解は一気に進む。さらに1970年代後半、KT境界(白亜紀と第三紀の境界)で隕石に多く含まれる元素が発見されたことをきっかけに、恐竜の絶滅は隕石の衝突によるという説が発表され、地質学的な現象は常にきわめてゆっくりと進んできたというそれまでの定説が揺るがされることになった。