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イギリス・華麗なる宮殿の旅 ウィンザー城
長い歴史と伝統を誇るイギリス王室。その宮殿に刻まれた知られざるエピソードと美しい建築の数々を、BBCのプレゼンター、フィオナ・ブルースが紹介していく全3回シリーズ。
第2回は、イギリス南東部の都市ウィンザーにある「ウィンザー城」。この城は、現在も使われている城として最も古く、また世界最大級の居城です。約1000年に渡り公邸として王家を支えてきたその城内は、君主たちの好みや野望を映し出し、様式の異なる部屋や芸術品が数多く共存しています。そんなウィンザー城に秘められた歴史や貴重な芸術品の数々を紹介しながら、王室の誕生エピソードに迫る。
ウィンザー城の歴史は、現イギリス王室の開祖・ウィリアム1世が、ウィンザーの崖に要塞を築いたことに始まり、城内には軍事拠点だったころの秘密通路などが今も残っている。
1327年に即位したエドワード3世の時代には、城に新たな意味がもたらされた。彼はウィンザーを新たな都と定め、現在でも最高の栄誉とされる騎士階級「ガーター勲位」を制定。城内にある聖ジョージ礼拝堂の天井には、王室の強さの象徴「ガーター騎士団」の紋章が刻まれている。
17世紀前半になると、イングランドでは激しい内戦が勃発。クーデターを起こしたオリバー・クロムウェル卿の手で国王チャールズ1世はウィンザー城に閉じ込められ、処刑されてしまう。ここで一時的に宮廷の歴史は分断し、君主制も廃止。しかしその陰でチャールズ2世は、王家復活を目指してウィンザー城内に新たな宮殿を建築した。その宮殿は、華やかな彫刻や絵画が宮殿を彩るバロック様式。こうした、それまでのイングランドにない建築様式を取り入れることで、チャールズ2世は王政復古をアピールしたのだ。
19世紀に入り、増改築を繰り返してきた城はジョージ4世の命令によって中世をしのばせるゴシック様式に統一された。最高級品だけを集めるという国王の方針で、内装は贅(ぜい)を尽くした家具や芸術品で満たされ、ビクトリア女王の時代には、迎賓館としても使われた。
時がたち、ウィンザーが再び国の象徴となる日が訪れる。ビクトリア女王の孫ジョージ5世が、それまで使っていたドイツ名を名乗ることをやめ、新たに「ウィンザー家」と名乗るようになったのだ。
1992年に火災に見舞われ、新たに改築されたウィンザー城。約1000年に渡り、いくつもの災難を乗り越えてきたこの城こそ、イギリス王室の歴史そのものだ。ウィンザー城の貴重な内装、秘蔵品を紹介しながら、現イギリス王室のルーツを解き明かす。