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イギリス・華麗なる芸術の旅 2 騎士たちの時代
本シリーズではイギリスの歴史を7つの時代に区分し、文書による記録ではなく、残された工芸品やアート作品を手がかりにひもといていく。案内役を務めるのは、イギリスBBCのコメンテーターとして知られるデビッド・ディンブルビー。
第2話「騎士たちの時代」が取りあげるのは、教会が力を持っていた12世紀後半から、王権が強まった14世紀後半までのおよそ200年間。この間、イギリスでは騎士道が花開き、信仰と戦いが融合された。
デビッドは、イギリス国内だけでなく、ヨーロッパ各地を訪ね、それに関連した工芸品やアート作品を紹介していく。
デビッドはまず、ケント州のカンタベリー大聖堂を訪ねる。1170年12月29日、トマス・ベケット大司教は、ここで国王の意を汲んだ騎士たちに暗殺された。この事件によって巡礼地となった大聖堂では、ベケットの奇跡を描いた美しいステンドグラスを見ることが出来る。
この頃、教会は社会全般に影響を与え、人々の考えや行動をも支配しようとしていた。デビッドはコベントリーのホーリー・トリニティ教会を訪ね、最後の審判を描いた恐ろしげな壁画を鑑賞する。
芸術の担い手は、修道士から芸術家へと変わろうとしていた。ケンブリッジ大学の図書館には、ベリー聖書と呼ばれる900年近く前の聖書が保存されている。色鮮やかな挿絵が描かれている、芸術性の高い聖書である。
中世も時代を下ると、教会と王室とを結びつける新たな思想、騎士道が誕生する。ウィンチェスター城のグレート・ホールには、エドワード1世がアーサー王の物語から発想を得て作らせた、巨大な円卓が展示されている。
デビッドが続いて訪れたのは、ロンドンのテンプル教会。テンプル騎士団の墓を飾る彫像は、今にも動き出しそうである。
騎士道には、女性に献身することも求められた。ノーサンプトンシャーのゲディントンには、エドワード1世が王妃の死を悼んで建てた記念碑が、今も残されている。
1340年代、エドワード3世はガーター騎士団を創設し、ウィンザー城をその本拠地とした。そして礼拝堂に、自分の剣を掛けたのだ。それは騎士道の二大要素である戦いと信仰が融合した瞬間だった。
だがエドワード3世の息子、黒太子は、信仰よりも権力欲を重視した。デビッドは黒太子の墓を見にいくため、カンタベリー大聖堂を訪れる。
さらにその息子のリチャード2世は、王冠自体を崇拝の対象にしようとした。絢爛豪華な王冠は皆、市民革命期に破壊されたが、ミュンヘンに持ちだされていた王妃の王冠だけは、いまもレジデンツ宮殿で生き延びている。
リチャード2世はまた、ロンドンのウェストミンスター・ホールを改築し、自らのシンボルの白い鹿で埋めつくした。彼の時代に、イギリスは独自の芸術をはぐくみ、チョーサーの「カンタベリー物語」などの英語文学を誕生させた。ロンドンのナショナル・ギャラリーには、リチャード2世が神からイギリスを与えられたと示す絵画が残されている。