BBC地球伝説
ストーリー
→ 歴史一覧へ
エイプマン 第4回 狩りと分業の開始
原始人類の一団が、死んだオーロックスを取り巻いている。獣の肩に刺さったヤリが抜かれる。興奮、団結心、喜びが渦を巻く。革の袋から手斧を取りだし、獣の皮をはぎ始める者がいる。斧が獣の骨を叩く。
25万年前のハイデルベルク人は、すでに現在の人類とほぼ同じサイズの脳を持っていた。当時の重しを付けたヤリが見つかっているが、これは彼らが組織的な狩りや、労働の分担を行っていた証拠である。人類の知性は、この時期に劇的に発達し、効果的な意思の疎通も可能になったと思われる。一方、性的魅力を強調するための装飾も初めて使われた。夫婦を中心とした家族は、この時期に誕生したのかもしれない。愛の概念が生まれたのも、この頃だったのだろうか…?
200万年以上の間、ホモ・エレクタスはアフリカとアジアで生息していた。彼らは熱帯にはうまく適応したものの、ヨーロッパへと北上することはなかった。
しかし人類は突然、意を決し、その過酷な環境に進出する。イタリア、英国、スペイン、ドイツにおける一連の発見を元に、科学者はそれがいかにして行われたのかを解き明かそうとしてきた。
1994年、イタリア南部のアルタムラ近郊で、地下の洞穴から化石人類の骨格が発見された。エリジオ・ヴァッカ博士とレスリー・アイエロ教授によれば、この「アルタムラ人」はホモ・エレクタスではなく、現在の我々と同じサイズの脳を持った初めての種だという。
熱帯に適応したハイデルベルク人が、ヨーロッパの凍てつく冬の気候と、たび重なる氷河期を生き抜くのは、容易なことではなかった。彼らはホモ・エレクタスに比べ、死肉をあさる能力がより優れていたのだろうと科学者は見ている。巧みに大型の肉食獣の後を追い、その食べ残しを平らげたのである。
しかし遺跡や化石化した骨からは、別の結論を導くこともできる。ハイデルベルク人は自ら獲物を狩るだけの知性と技術を持っていたというのである。もしそれが本当なら、人類進化の大きな節目を25万年前に置かなければならない。ハイデルベルク人がヨーロッパで生き抜くには、彼ら以前の化石人類には見られなかった、ある種の社会的結束が不可欠だった。そのことから、人類に愛という複雑な感情が生まれたのは、この時期、この場所だったと見る科学者もいる。