BBC地球伝説

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ストーリー

モンスター ~人類が出会った驚異たち~ 生存競争の果てに

ニュージーランドは南北2つの島からなり、長い間外界から隔離されていたため、独特の生態系を形成していた。天敵となる陸生の肉食哺乳類がいなかったことから、多くの鳥は飛べなくなっていた。恐竜が地球上に現れる前から生息していた爬虫類もいた。こうした珍しい生物にあふれていたニュージーランドは、13世紀に人類が移り住んだことでその風景を一変させる。
ポリネシアからニュージーランドに移住し、のちにマオリ族と呼ばれるようになった人々――先住民族の祖先にあたる――は、飛べない巨大な鳥・モアを好んで食べた。しかし、モアは年に1コしか卵を産まないので、繁殖がマオリ族の食欲に追いつかず絶滅。時には人間をも食べた巨大な鷲・ハーストイーグルも、主要な食料であるモアを失い、絶滅した。マオリ族の食生活が、島の生態系を狂わせたのだ。
また、マオリ族がポリネシアから連れてきたネズミは、陸生の鳥類の多くを食べつくして絶滅させた。天敵のいないニュージーランドで、ネズミは増殖を続けた。繁殖力の強い外来種が在来種を駆逐し絶滅させた例は、ニュージーランドだけでなく、世界中の至るところで見られる。ハワイの植物の半分は外来種であるという。
限られた食料をめぐり部族抗争を繰り返していたマオリ族は、生態系を狂わせたことの重大さに気づき、森を聖地として封印。森の中で鳥を狩ることを禁じた。こうして、ニュージーランドの生態系は一定の回復を見た。
乱獲や環境破壊による生態系の歪みは、現代を生きるわれわれが抱える大きな問題の一つだ。マオリ族が森を封印したのと同様のことを、21世紀の人類は地球規模で行うことができるのだろうか?地球の運命は、まさにそこにかかっている。