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ルネサンスの真実 ベネチアの光と影
ルネサンスの全貌を追って、ヨーロッパ各地を訪ねるシリーズ。
今回は、ベネチア共和国とその芸術の歴史にスポットを当て、小さな離れ島ベネチアが、いかにしてルネサンスの中心的都市へと発展していったのかを描く。
水運に恵まれ、海上の貿易により発展していったベネチアは、他国から様々な文化を取り入れ、自由な気風と型に捕らわれない芸術や建築を育んでいった。ルネサンスという考えにも、さほど拘らず、過去のビザンティン様式やゴシック様式も保ち続けた。こうしてベネチアは絵画を中心として実に多様な芸術を発展させ、ティツィアーノら偉大な芸術家を世に送り出した。華やかなベネチアの芸術作品を、水の都と讃えられる美しい街並みの映像を交えて紹介してゆく。 イタリア北部、アドリア海上に浮かぶ水の都ベネチア。その歴史はローマ帝国の崩壊後、侵略者の手を逃れてきた人々が住み着いたことから始まった。ベネチアの祖先である彼らは、恵まれた水運を利用して貿易を始めた。貿易圏はやがて東方のコンスタンチノープルまで広がり、ベネチアはルネサンス都市へ絹や香辛料を供給する貿易の都となっていった。貿易は画家たちに貴重な顔料をもたらし、色彩豊かなベネチア絵画を生んだ。さらに、共和国憲法に支えられた自由な都市環境、あらゆる文化を取り入れる貿易港としての気質が、ルネサンスにとらわれない独自の芸術を育んでいった。
しかし、オスマン・トルコ帝国の隆盛により、ベネチアは海上での力を脅かされ、建築という新たな方法で国威を示そうとした。第二のローマ帝国を目指したこの動きで、古典建築がベネチアに再生した。
また水に囲まれたベネチアは、本土への憧れを抱いており、ベネトという領土を獲得した。そこではローマ時代の自然崇拝が再燃し、田園生活を主題にした快楽主義的な絵画や詩が発展した。そんな中ティツィアーノは、画家としての才能と商才を発揮して、ベネチア絵画を全ヨーロッパに広めていく。特にスペイン王室に愛され、芸術界の頂点に立ったことで、ティツィアーノの作品、そしてベネチア絵画は、後世の画家にも大きな影響を与えることとなった。だがスペイン王国は、同時にベネチアの貿易を脅かす存在でもあった。ベネチアは甘美な田園生活の場としていたベネトを、新しい国力の源とみなし、積極的に農業に取り組んだ。この貿易から農業への転換は、新しい建築様式を生みだした。パラディオが貴族の別荘の設計で発展させた、ローマ神殿と農家を融合させた建築様式だった。こうしてベネチアは隆盛と衰退を経験し、様々な文化を取り入れ、華やかで独特な芸術を花開かせていった。