百年名家～築100年の家を訪ねる旅～

“ワイン王”と“皇弟”の別荘
～日本近代史を紡ぐ海浜の館～

今回は千葉市稲毛を訪ねます。稲毛は明治 ２１年に海水浴場が設けられ、リゾート地としての側面を持つようになります。茶屋や料理屋が建ち並び、多くの海水浴客や文人が訪れるようになると、やがてこの周辺は別荘地として名を馳せていきました。そんな稲毛には戦前の昭和史が染み込んだお宅が今もなお残されています。拝見するのは実業家、神谷伝兵衛の別荘。「シャトーカミヤ」を創設した神谷伝兵衛はワイン醸造で成功を収め、日本の“ワイン王”と呼ばれています。日本初のバー「神谷バー」を開業した人物としても有名です。そのワイン王が建てた洋館は１階が完璧な洋室であるのに対し、２階は純粋な和室となっています。この構成はジョサイア・コンドルの旧古河邸を髣髴とさせます。その中で最も目を惹くのは天井高が約３ｍもある２階の客間。ブトウの木の床柱や猫間障子の建具に用いられたタガヤサンなど、銘木が惜しげもなく使われた豪華な部屋となっています。洋館部分は２年かけて修復工事が行われ、現在は一般公開されています。更にラストエンペラー「愛新覚羅溥儀」の弟「溥傑」夫婦が暮らしたお宅も拝見。激動の時代を生きた溥傑の歴史を感じさせる貴重な建物です。

取材先情報

旧神谷伝兵衛稲毛別荘

千葉県千葉市稲毛区稲毛1-8-35
TEL：043-248-8723（千葉市民ギャラリー・いなげ）
開館時間：午前9時～午後5時15分
休館日：
　毎週月曜日（祝日の場合は翌日）
　年末年始(12月29日～1月3日)

千葉市ゆかりの家・いなげ（愛新覚羅溥傑仮寓［あいしんかくらふけつかぐう］）

千葉県千葉市稲毛区稲毛1-16-12（国道14号沿浅間神社大鳥居脇）
TEL：043-244-5370
公開時間：午前9時～午後4時30分
休館日：
　毎週月曜日・祝日（5月3～5日除く）
　年末年始（月曜祝日は、その日と火曜日）

※上記以外の情報については、公開出来ません。