百年名家~築100年の家を訪ねる旅~
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群馬・桐生~大名主の住む絹織物の町~
今回の『百年名家』は、群馬・桐生。
桐生市周辺では織物業が江戸時代初期から盛んに行われていました。18世紀の初め、京都西陣から紋織物の技術が伝わリ、高級絹織物の町として成長します。やがて明治時代になると近代織物産業の町として発展。そして現在、織物の町・桐生の象徴的な存在として「ノコギリ屋根」や土蔵造りの店舗など、昔ながらの町並みが残されていることが評価され、念願の重要伝統的建造物群保存地区に今年選定されました。そんな絹織物と共に歩んできた町並みを八嶋さん、本上さんが巡ります。
まず2人は140年の歴史を持つ織物工場「後藤織物」へ。1870年(明治3年)創業、丸帯などの帯地を 生産しています。国の登録有形文化財でもある木造の「ノコギリ屋根」の工場で機を織るリズミカルな音を聞きながら、昔ながらの紋紙(穴の開いた紙)を利用して織進める高度な伝統技法に見とれる二人。
次に訪れるのは、外国で高い評価を得ている、明治元年創業の老舗「金子織物」。ニューヨーク近代美術館(MOMA)などで永久保存されている生地を特別に拝見。あまりの美しさに目を奪われる。
桐生の象徴的存在でもあるノコギリ屋根工場。このノコギリ屋根工場を使って新たな商売を始めた人たちがいます。1927年(昭和2年)に建築された大谷石造りの、ノコギリ屋根工場を使ったワインの貯蔵庫「カーヴかない屋ワインセラー」です。保温性に優れたこの貯蔵庫は、ワインの保存に最適で、東京の名だたるレストランなどに卸されています。高級ワインを目の当たりにして思わず試飲をお願いする八嶋さん。果たしてそのお味は…?
さらに、ノコギリ屋根のパン工房へ向かう。1919年(大正8年)建築のレンガ造りで、レンガは東京駅と同じ深谷産。お洒落な外観、そしてノコギリ屋根によって生み出された空間、そこはまさに外国。さぞかしパンを作る上でも良い環境と思われるが、店主からは思いもよらない秘密を聞かされる。
最後に全国でも指折りの旧家「彦部家住宅」を訪れる2人。今を遡ること1300年、現在の当主はじつに49代目に当たり、住宅は築400年といわれ、国の重要文化財になっています。山と土塁に囲まれた2万600平方メートルの広大な敷地は、館を山麓に配置した典型的な中世のお城の形態で、敵を打つためのやぐら台も備えてあります。さらに敷地内には、12世紀に源義国が石清水八幡宮より勧請された竹ヶ岡八幡宮があり、徳川家ゆかりの久能山東照宮と日光東照宮と一直線に繋がっていました。 1300年の歴史を守る責任感、そのために広大な歴史的建造物を維持するご主人だが、そこには相当な苦労があったとの事。
今回は産業文化の歴史と、日本屈指の旧家の重みを知った旅でした。