百年名家~築100年の家を訪ねる旅~

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茨城・筑波山麓 ~華麗なる茅葺きの里~

今回の『百年名家』は茨城・筑波山麓。

筑波山麓は60軒以上の茅葺き民家が残る豊かな山里です。茅葺き職人たちが腕を競いあって独特の筑波流と呼ばれる茅葺き屋根を作り上げ、日本全国のなかでもかなりトップクラスの技術だと言われています。今回は茅葺き民家特集です。

春爛漫の日差しの中、八嶋さんと本上さんは梅が咲き誇る観光名所、筑波山梅林を訪れました。筑波山麓が一望できる茅葺きの展望台で案内人と待ち合わせです。たくさんの梅に囲まれ素晴らしい景色を堪能する2人でした。

まず2人は旧街道が交差するところに建つ旅籠に向かいました。
訪ねてみるとそこはなんと全国的にも珍しい二階建ての茅葺き。現在は住まいとして使用されています。屋根の棟飾りは「筑波流」の独特のもので「グシ飾り」と呼ばれます。2階の黒漆喰が塗られた戸袋に書かれた松本屋の文字が、かつて旅籠だったことを物語っています。裏の平屋の書院は池のある庭に面した落ち着いた佇まい。格の高い方だけを通した特別な部屋だったそうです。筑波流の茅葺き民家に華麗な技を感じた2人でした。

次に訪れたのは石岡市大増地区。
ここはかつて日光へ向かう宇都宮街道の旧宿場町で嘉永3年(1851)と昭和10年に大火に見舞われました。嘉永3年の大火の後、防火用のモチの木の「イグネ(生け垣)」が村のあちこちに植えられたおかげで昭和10年の時には延焼を防ぐことができたそうです。現在もイグネは災害から立ち上がった村を象徴する景観となっています。昭和30年頃までは、みな茅葺き屋根だった民家も、今では一軒だけ。2人はそのお宅を訪ねました。
筑波流の茅葺きの民家の特徴は何層にも積み上げる茅葺き屋根。葺き替えるときは一番上の層だけを変えます。一番下の層だけが稲藁でそれ以外はススキ。土間からは下の層である稲藁がよく見えます。筑波山麓一帯で建てられた江戸時代の原型をもっともよく残している民家の一つです。災害で学んだ先人たちの知恵を知った2人でした。

筑波山麓では、梨やブドウなどの果物の栽培が盛んに行なわれています。続いて2人は果実園の中にある茅葺き民家に向かいました。夏から秋にはブドウ狩りで賑わう「大場観光ぶどう園」。ぶどう棚を抜けると庭が整えられ、江戸時代末期に建てられた茅葺きの母屋は、現在も大場夫妻の住まいになっています。母屋の茅葺き屋根には松竹梅をあしらった豪華な棟などがあり、平成17年に国の登録有形文化財となりました。もともと農家の茅は、葺き替えた後、有機肥料として田んぼや畑にまいて使っていました。茅葺き民家が姿を消しつつあるなかしかし、大場家では、今だにぶどうの肥料として、使い古しの茅を使っているそうです。ぶどう園の一角にある茅葺き小屋で茅に触れる2人。吊るされているハンモックに揺られ、大はしゃぎの八嶋さんでした。

最後に向かったのは全国でも珍しい4世代が暮らす茅葺きの旧家。ご主人は茅葺き保存会の会長でもあります。母屋は分厚くきれいな7層の茅葺き。別棟の書院も旧家の特徴。現在、夫婦は書院で暮らし、母屋には息子夫婦、別棟に孫と曾孫が住んでいます。代々隠居したら母屋を子供に譲って別棟で暮らすという生活を繰り返しているのだそうです。2人はご家族との対話の中で、旧家とは幾世代にわたって少しずつ家や庭を変えながら連綿と暮らすもの、ということを知りました。

今回は茅葺き民家の魅力を存分に味わった旅でした。