百年名家~築100年の家を訪ねる旅~

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嵯峨野で出会う奥深い町並み ~400年続く門前町 京都・鳥居本~

今回の『百年名家』は京都・嵯峨鳥居本。
嵯峨鳥居本(とりいもと)は京都市街の北西、嵯峨野の奥座敷に位置する全長約650mにわたる街道筋の町です。
室町末期頃、農林業や漁業を主体とした集落として開かれ、江戸時代には愛宕神社の門前町としての性格も加わりました。そのため、街道沿いに町家と農家が混在するという、全国でも珍しい町並みで、昭和54年に重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。「鳥居本」の由来は、愛宕神社の「一の鳥居」から始まる門前町だからという説と、「五山送り火」での曼荼羅山「鳥居形」の麓だからという説とがあります。

八嶋さんと本上さん、まずは京都の定番スポット嵐山の渡月橋から今回の旅を始めます。桂川を挟んでのぞむ緑深いエリアが嵯峨野。二人は最近特に人気の高まっている「竹林の道」を訪れ、嵯峨野はもともと農村地帯だったことを知ります。

そこで2人は鳥居本の町並みを理解するため、数少なくなった嵯峨野の原風景を見せていただくことに。最初に訪れた「川端家」は、嵯峨野の典型的農家の造りで入母屋造りの茅葺屋根が特徴です。農家でありながら、町家風の格子窓があり、感銘を受ける2人でした。  

    古い町家が建ち並ぶ愛宕街道を歩いていくと、かわいい人形のお店が見えてきました。店内の商品はすべてまゆで作った「まゆ人形」。製作しているのは、京都の生糸問屋12代目、蒲田哲夫さん。36年前にこの鳥居本の町並みに魅せられて店を出し、人気を博しています。絶え間なく続くご主人のおしゃべりに、大爆笑の2人でした。

鳥居本といえば最も有名なのが「化野(あだしの)念仏寺」。弘法大師によって約1100年前に建立されました。8000体にも及ぶ石塔・石仏には圧倒されます。

念仏寺を後にすると鳥居本の風景が一変します。それまでの町家の風景から農家風の町並みへ。中でも「松山家」は葺屋根と瓦屋根の合体した家で、主屋から直角に突き出した棟を持ち、ここ鳥居本では「角屋葺(つのやぶき)」と呼ばれています。建築年代は江戸中期以前で、当時の様式を出来るだけ残して保存しています。築300年前後の家に今だに住み続けている松山家の人々。家は住んでこそ意味があると改めて感じた2人でした。

さらに歩いていくと、愛宕神社の「一の鳥居」が見えてきました。愛宕神社は、愛宕山の山頂に位置し、火伏せの神様として古くから信仰を集めてきました。その一の鳥居に繋がる参道に、風情のある茶屋が2軒。愛宕神社の参拝客のために400年前から営業を続けている老舗、「つたや」と「平野屋」です。鮎料理の店として鳥居本のシンボル的存在となっています。両店とも、嵯峨鳥居本に点在する茅葺民家の典型で、入母屋の破風(はふ)と「一の鳥居」、そして背後の山々の縁が相互に引き立て合って、この町の景観に独特の美しさを与えています。

2人はまず「つたや」を訪れました。「つたや」は近年内部を改修しているため、古い姿を留めているのは、茅葺の屋根と通りに面した店舗の一部のみとなっていますが、揚げ戸式の雨戸や、店に掲げられた「購札」に歴史の重みを感じさせます。嵯峨野には世界的な建築家「イサム・ノグチ」が暮らしていたことがあり、その縁でこの家には彼が設計した座敷が残されています。14代目当主の井上さんは、イサム・ノグチによる改修当時のことを、子供ながらに覚えているそうです。2人は鮎料理に興味津々。普段は懐石料理のみ出すお部屋で特別に鮎丼をいただくことに。頭も骨もまるごと食べられる鮎丼を堪能した2人でした。

「つたや」を出た2人は隣の「平野屋」へ。平野屋では、今も「おくどさん(かまど)」を現役で使用して料理を作っています。内部もほとんど当時のままで、長い年月を感じさせる店内は圧巻です。屋根は同じく茅葺。竹や縄の組み方や屋根裏の様子、そして柱や梁、板壁、手すり、種々の建具まで、一見の価値があります。おくどさんで沸かしたお茶もいただき、深みのある色合いが染みついた店内を心から楽しみました。

今回は京都の奥深さを再認識した旅でした。