百年名家~築100年の家を訪ねる旅~

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長屋門の景観に癒される旅 ~工夫の古民家 千葉・市原~

今回の『百年名家』は千葉県市原市。
八嶋さんと本上さん、今回はちょっと懐かしい佇まいの駅からスタートです。
小湊鉄道 上総鶴舞駅は市原市都市景観賞を受賞し、関東の駅百選にも選ばれている駅です。駅舎は大正14年3月の開業当時からのもので、80余年もの時を刻んできました。こじんまりとしたかわいい木造の駅舎は旅情や哀愁を感じさせる、一日の利用客はわずか28人の無人駅です。和みの空間に癒される二人でした。

小湊鉄道の上総鶴舞駅から西へ5キロ離れた、医光寺(いこうじ)。お堂の奥には、3代将軍徳川家光の母、崇源院と言い伝えられている木像があります。崇源院とは戦国大名・浅井長政の三女・お江です。お江の親戚である浅井一族は、江戸時代に三好と姓を改めて市原の山間部に2000石の領地を持つ旗本となりました。その領地の一つが50戸ほどの集落・栢橋(かやはし)です。そこは長屋門が立ち並ぶ、知る人ぞ知る長屋門銀座です。
二人は早速長屋門巡りをしてみることに・・・。

最初に訪れたのは栢橋地区で一番大きな鈴木家の長屋門。この長屋門は鈴木家から700メートル離れた場所にあった旧代官屋敷から明治期に移築されたものです。軒までの高さも高く、全体として格式の高い長屋門の形式をよく示しています。次に向かったのは内藤家の長屋門。門が建てられた当時(江戸末期)に植えられた欅(けやき)の木が左右に威容を誇っています。正面向かって右室は低い床板張りの部屋で、背面の出入口に頑丈な引き戸を設け2重施錠を備えています。内藤家を後にするとなんと、お隣も長屋門。長屋門の下でおばあさんがあられを焼いていました。84歳の村串さんは戦後まもなくこの家に嫁いできました。昨年の東日本大震災をきっかけに母屋を解体し、現在は仮住まいとして長屋門に暮らしています。母屋の跡は畑と美しいお庭になっています。お庭の奥の斜面には珍しい横穴式の井戸、奥行きはなんと30メートル。現在も湧き水が流れ続けています。その水を畑の水やりや生活用水として利用しています。元気いっぱいの村串さんに終始圧倒される2人でした。

続いて2人が向かったお宅は古民家をリフォームした築150年の中村さんのお宅です。長らく人の住んでいなかったお母様の実家を再生しました。お母様のご希望通り柱や梁、部屋の趣や間取りなど、極力手を入れずにリフォームする一方で、トイレや台所などの水回りには最新の設備を導入、断熱性の優れた複層ガラスを利用し生活しやすい環境を作っています。現在でも使用できる戸棚は、再生利用をしています。思い出深い部分は残しつつさらに100年先まで持ち続ける家を造りたいと願う家族の想いに感動する2人でした。

最後に向かったのは古民家を大改装したオシャレな喫茶店、カノン。オーナーの藤沼さんは、アメリカン家具の職人でもあります。2004年に築200年以上の古民家と出会い、2年がかりで自ら改装。喫茶・レストラン・バーの店を開きました。店内は椅子もテーブルも全て手作り、ガラスは規格外の廃材を無料でもらって形を整えてはめ込んでいます。古民家のもとの形を活かして店をレイアウトし、むき出しの梁とむき出しの壁が本物の持つインパクトを放ちます。オープンから5年たった今も店の改装を続けているそうです。隠れ家のような雰囲気の屋根裏部屋では茅葺きの裏側をみることができます。手作りの建物のぬくもりと、手作りのケーキの美味しさをかみしめる2人でした。

今回は思い出とともに古民家で暮らす方々、魅力的に古民家を残そうとする方々に出会った旅でした。