百年名家~築100年の家を訪ねる旅~

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知られざる奈良の名家を訪ねる旅 ~生き続ける町家 奈良・宇陀松山~

今回の『百年名家』は奈良県・宇陀松山。
宇陀市は奈良県の北東部に位置し、四方を山に囲まれた高原都市です。今回の舞台、宇陀松山地区は宇陀松山城の城下町。江戸時代から明治、大正時代の建物がそのままの形で残り2006年には国の重要伝統的建造物群保存地区に設定されました。京都や奈良と伊勢を繋ぐ交通の要衝であり、城下町から商家町として発展した町並みには「前川」と呼ばれる水路が走っています。せせらぎの音を耳にしながら、独特の景観を八嶋さんと本上さんが巡ります。

2人が通りを歩いていると、創業150年の芳村酒造の建物で城壁の様な、変わった壁を発見しました。これは卯建(うだつ)といって火事が起きた時、隣の家への類焼を避けるために建てられたものです。宇陀松山では寛政の頃に大火に見舞われ、町のかなりの部分が焼失したといわれ、その頃からの始まった防火対策と考えられています。

案内人によって2人は奈良県の名産品、吉野葛の製造する「黒川本家」に向かいました。宇陀松山の特徴は何と言っても奈良県一の寒冷地、そして水にあります。ここは一級河川淀川の上流にあたり、かつてはお城の壕の役目もしていた宇陀川という川が流れています。吉野葛は上質な水と、この川風を上手く利用することによって代々作られてきました。
黒川本家は寛政3年ごろに建てられ、宮内省御用達の看板もある由緒正しきお店。そこで2人は葛製造を見学し、生葛を小割にする作業を体験させてもらいました。見ているのと実際やってみるのは大違い。悪戦苦闘する2人でした。

続いて向かったのは元料理旅館の森岡医院。宇陀松山は明治時代に郡役所や裁判所が置かれるなど松山地区の群の政治、経済の中心地でした。そのため町は賑わい、料理旅館や商家がたくさんありました。接待によく使われた料理旅館の一番の特徴は、宇陀川から引かれた用水路が建物の中を通っていること。水のせせらぎが聞きながら飲む一杯…なんとも贅沢な元料理旅館でした。

次に向かったのは「都司家」。かつてこちらの町長を務めていた町の名士だけに、建物も立派です。一般的な玄関の他に、冠婚葬祭などの公的な行事のみに使用される座敷玄関。
そして三国志の三顧の礼をモチーフにした襖絵など見どころがたくさんあります。今回は特別に座敷玄関を開けてもらいました。しかし玄関を開けるには、戸を二段階に上にすりあげる作業が必要。やっとのことで座敷玄関を開けることに成功し、八嶋さんと本上さんはまた一つ古民家の知識が深まりました。

最後に2人は商工会青年部の人達に会いました。現在、彼らは宇陀松山の町づくりに積極的に取り組んでいます。古い町並みのライトアップや、空家の有効活用などの活動を通して人とのつながりが断たれてしまわない町づくりを目指しています。

今回は世代を超えて町を守る心の絆を感じた旅でした。