百年名家~築100年の家を訪ねる旅~

百年名家~築100年の家を訪ねる旅~

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心がつなぐ歴史の町 ~街道の面影残す 静岡蒲原~

今回の『百年名家』は静岡・蒲原(かんばら)。
天才浮世絵師 歌川広重の傑作『蒲原夜の雪』にも描かれた東海道15番目の宿場町があった場所です。
江戸時代の面影を残す全長約1,2kmの宿場町を八嶋さんと本上さんが巡ります。

まず、2人がやってきたのは蒲原宿の東の玄関口があった東木戸跡。
木戸とは宿場の治安と管理のために設けられた門のこと。
現在、木戸門はなくなりましたが、旅人の足元を照らした約180年前の『常夜灯』が残っています。ここから2人の旅が始まります。

案内人のもと街道を歩く八嶋さんと本上さんは、2階の天井が通常のものよりも低い「厨子(つし)二階」と呼ばれる町家を何軒か目にします。これは、「町人が武士を見下ろさず」の禁制から本格的な2階が建てられなかったため。
武家も通った街道沿いに建つ町家ならではのつくりともいえます。

往時は町家や旅籠が軒を連ねていた蒲原も近年、古い建物は姿を消しつつあります。
そんな中、2人は現存する町家のひとつ、なまこ壁が印象的な吉田家を訪れます。
吉田家は昭和まで「僊菓堂(せんかどう)」という和菓子を作っていた大店の商家。
柱がなく広々とした「店の間」づくりになっており、土間が奥まで続きます。
住人の思い出話を聞きながら、探検気分で奥へ奥へと進む八嶋さんと本上さん。
そこには、昔の町家の姿をとどめながらも時代の変化と共に、住みやすく工夫された生活の跡が見られました。

吉田家を後にした2人は旅籠 和泉屋・お休み処に向かいます。
大名や公家が宿泊したという「本陣」の目の前に建つ和泉屋は1833~1844年の建物です。2階の櫛形の手すり、看板かけや「もちおくり」と呼ばれる彫刻入りの柱等、上旅籠の面影を偲ぶことができます。
しかし、40数軒あったという旅籠も今は、この1軒を残すのみ。
現在はたばこ屋さんとお休み処になっていますが、今なお「旅人」に憩いの時間を提供しています。

そして、最後に訪れたのは旧五十嵐歯科医院。
大正3年に当主が歯科医院を開業するにあたり、大正以前に建てられた町家を洋風に増改築した擬洋風建築と呼ばれる建物です。
外観は洋風で、内観は和風とユニークなつくりに興味津々の2人。
1階は家族の生活空間、そして、2階は陽光がさし込む明るい診療室と技巧室がありました。また、特別待合室には、富士と松原の欄間や松と鷹等が描かれた襖絵があったりと大変豪華。
しかし、そんな旧五十嵐邸も空き家同然となっていた時期もありました。
そこで、「素敵な建物を残したい」と立ち上がったのが地元のご婦人方。
町の人々の協力もあり、美しく蘇った旧五十嵐邸は現在、蒲原の新たなランドマークになっています。
昔ながらの釜で炊いたご飯で作ったおにぎりと豚汁をご馳走になった2人。
明るいご婦人方に囲まれ、話も弾みます。

旅人をもてなしてきた宿場町 蒲原の心は、現在も住民たちに受け継がれています。
今回は、歴史とおもてなしの心を知った旅でした。