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六甲山の中腹のコシノヒロコさんの家
関西屈指の高級住宅街として知られる兵庫県芦屋市。今回は、六甲山の自然が美しいこの街に暮らす、ファッションデザイナー・コシノヒロコさんのお宅を訪ねます。
「コシノ三姉妹」の長女、ヒロコさんが芦屋に居を構えたのは、初のパリコレクション参加を翌年に控えた1981年。活躍の場を世界に移していこうと決意を固めたコシノさんは、日本ならではの四季をデザインで表現したいと考えていました。そこで設計は、その当時まだ無名だった建築家、安藤忠雄さんの才能に惚れ込んで設計を依頼。コンクリート打ち放しの無機質な空間に身を置く事で、日々刻々と移り変わる繊細な四季の色彩を、余すことなく感じる家を目指したのです。しかし、築30年あまりが経ち、子どもたちも独立し、コシノさんのライフスタイルも変化。新たな家の使い道を考えていました。そこでご自身のクリエイティビティをさらに刺激し、また国内外から訪れるゲストを迎えられる場所をコンセプトに大規模なリモデルをすることに。長年暮らす中で気付いた点や、ご自身が考えたことを実現すべく、再び安藤さんに依頼し、リモデルしました。番組では、30年の時を経てついに、完成作品となった自慢のご自宅をたっぷりとご紹介します。
壁に飾られたコシノさんの描くアート作品が、コンクリートと美しく調和するコシノ邸。リビングの窓は当初、庭の風景の一部分だけを切り取る設計でした。しかし、コシノさんの提案で、床から天井高まである大きな窓に変更。松やもみじ、あじさいなどの四季の彩りを、室内にいながらも存分に楽しめる贅沢な空間になりました。
リモデル前は、ご自身がデザインしたスキーウェアを着て生活していたほど寒さが厳しかったというコシノ邸。そこで今回のリモデルでは家の気密性を高めることにしました。また、リビングの床に敷いた黒御影石は、コンクリートの質感と相性がいいだけでなく、一度床暖房を入れると石自体が熱を保つため、暖かさが持続し耐熱性にも優れています。
玄関ホールの脇には、コシノさんが三味線の稽古をする和室も作りました。和室の天井に和紙を貼ったのも、コシノさんのアイデア。和紙の温もりが部屋全体を優しく包み、居心地のよい空間になっています。
快適になっただけでなく、ますます創作意欲をかき立てられる家へと生まれ変わったコシノ邸。いずれはここでファッションショーを開きたいと笑顔で話すコシノさん。2人のクリエイターの情熱とこだわりの詰まった家で、世界中を驚かす新しいデザインが今も育まれています。
設計担当:安藤忠雄建築研究所
http://www.tadao-ando.com/