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元は煎餅屋 ペンシルビルを再生した本郷の家
東京大学がキャンパスを構える文京区本郷は、森鴎外や夏目漱石、樋口一葉など文豪たちが愛した、歴史と文化の香りが漂う町です。今回訪ねたお宅は、その昔、徳川将軍が日光東照宮へ向かう折りに利用したと言われる、本郷通りに面するわずか7坪の敷地に建っています。
W邸は、築31年の4階建てビル。ワンフロアの広さがおよそ12帖というこの家で暮らしているのは、建築家のWさんご夫妻と愛犬のジャック君です。以前は 浅草の賃貸マンションにお住まいでしたが、ご主人の仕事場も兼ねており、仕事とプライベートの境がつけられないことがご夫妻の悩みでした。そんな時に見つ けたのが、奥様の実家に近いこのビルでした。1階はおせんべい屋さんの店舗、2階から上が住居というこの物件を、一目見ただけでリモデルのプランが浮かん だというご主人。細長く鉛筆のような形をした古ビルが、まるで海外のアパートメントのように生まれ変わりました。
1階にあったおせんべい屋さんの店舗は、ご主人の建築事務所に。本郷通りに面する壁は大きな一枚ガラスにし、通りを行き交う人々から仕事の様子を見られる ことで、緊張感を持って仕事に取り組めるようにしています。ジャック君も、ガラス越しに通りを眺められるこの場所がお気に入りのようで、今では事務所の看 板犬として道行く人たちの注目を集めています。その事務所の一角には、住居部分への玄関を作りました。仕事場に入るご主人が気持ちの切り替えをする為の、 大切な場所です。
2階から4階までは、それぞれ10帖ほどの広さしかないため、各階の役割分担が重要だったW邸。水回りを集めた2階は、フロア全体を浴室として感じられるよう、浴槽やトイレをカーテンで仕切るだけにしました。
3階はダイニングキッチン、4階は寝室を兼ねたリビングに。3階と4階のあいだには吹き抜けがありましたが、光と風を通しながらも、床として使えるよう、そこには排水溝の蓋などに使われるグレーチングを敷きました。
ここに越してから、一人暮らしのお母様もよく遊びに来るようになり、家族の結びつきが強くなったというWさん。仕事に集中できる環境も整い、これからますます素敵なリモデルのアイデアが生まれてきそうです。
設計担当:ジーファクトリー建築設計事務所
http://www.gaku-watanabe.com/