建物遺産～重要文化財を訪ねて～

 福住旅館

福住旅館は、箱根湯本の老舗旅館で早川に面している。北の萬翆楼は明治11年(1878)に、南の金泉楼は明治１０年(1877)に、それぞれ竣工している。構造はともに１・２階を木骨石造とし、３階は漆喰塗仕上げの土蔵造で、寄棟造、桟瓦葺である。内部意匠は各室とも想を凝らしており、奇巧性に富んだ意匠や仕掛けが随所に見られる。福住旅館の萬翆楼と金泉楼は、二棟間の中央に玄関を設ける建築構成や、３階をひとまわり小さく造る階層構成に特徴がある。これらは、ともに明治初期の木骨石造建築の技法を伝える遺構として、また数少ない擬洋風建築として重要である。