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2012年12月14日・2013年1月18日
「冬の京都×設える」
紅葉の彩りも終わり穏やかな冬の京都が、もうひとつの顔をみせはじめる季節です。
師走13日の「事始め」を境に京都は、一気に年の瀬の慌ただしさに包まれます。
1年に感謝し、新しい年の準備にいそしむ…。京都の新年の設えは、意外にもシンプル。
凛とした清々しさを感じさせるものでした。
一年の恵みに感謝しながら、新年を設える冬。京都は、季節と暮らす町でした…。
「正月」とは、年神様を迎え新たな一年を守っていただくために、おもてなしをする大切な期間。
年神様を気持ちよくお迎えするため、一年の煤や埃をはらって部屋を清めるのが「煤払い」。
お越しになった年神様を海と山の幸でもてなすのが「おせち料理」。
そして、正月飾りは、年神様が降りてこられる依り代。
門口に飾る注連縄は結界の役割を果たし、ここから先、不浄なものは入れないという印です。
その年にとれたお米のワラで作られる注連縄は五穀豊穣を祈願する意味もあります、
お米の国、日本ならでは。
天照大神が天岩戸から出てこられた時、二度と中に戻らないようにと注連縄をかけたのが始まりとか。
ところで、「はんなり」という京言葉をご存知ですか?
「花あり」から転じた言葉で 優しい中にも凛とした粋な魅力のある佇まい。
そんな、はんなりとした正月飾りがあるんだそうです。
「餅花」と言われる正月飾り。
ここ京都では、縁起ものとされる柳の枝に紅白のお餅を小さく丸めて使います。
五穀豊穣と無病息災を祈願する餅花は京都の町並みで揺れる、はんなりとした正月飾りです。
そして、もうひとつ…「根引き松」。
一尺あまりの若松に半紙を巻いて水引でくくったシンプルな正月飾りです。
「根引き松」という名前の通り若松の根を、そのまま残しているのが特徴。
使うのは2、3年目の若松。
根を残すのは「しっかり根付くように」、「成長し続ける」という意味が込められ、無病無息を祈るもの。
しっかり半紙を留めるため、水引は帯締めと同じ結び方にします。
凛として上品な佇まい。京都のはんなりしたお正月飾りです。
お正月の準備に慌ただしい年の瀬、二十四節気のひとつ「冬至」がめぐってきます。
一年で最も太陽の力が弱まる頃。
湯につかって病を治す「湯治(とうじ)」にかけ、
さらに「柚(ゆず)」も「融通(ゆうずう)が利くように」という願いが込められ、ゆず湯に入ります。
かぼちゃを食べる風習は、野菜が不足する冬場に、
保存のきくかぼちゃを食べてビタミン類を補った先人の知恵です。
食養生で寒い冬を乗り切る…。
京都には、独特な冬至の慣わしがありました。
京都・東山。
高台寺の門前に、四季折々の京料理を味わえる料亭があります。
高台寺和久傳。
和久傳の料理長が、京都に伝わる冬至の独特な風習を教えてくれました。
それは七運という、最後に「ん」のつく食べ物を食べること。
「七運」とは、「人参」のように、名前に「ん」の字がつく食べ物を食べて
「運」を付けようというもの。
人参の他に、南瓜、金柑、蓮根、銀杏、寒天、うどんの七種類。
成功には運と根気と鈍感さが必要ということわざ。
「運根鈍(うんこんどん)」に語呂合わせした食材。
これらは「冬至の七種(ななくさ)」とも呼ばれています。
昔の人は、冬至をすぎて、再び日が長くなり始めると運気が上昇すると考えました。
その運を引き寄せるため、七運の料理が作られるのです。
鮮やかな紅葉も終わりを告げて、もう冬枯れの季節。
景色が色を失っていくかわりに浮かび上がってくるのが「冬の香り」。
研ぎすまされた空気の中に、枯れ行く木々の香りをふと、感じることはないでしょうか。
お香の世界で冬の香りは「落葉」とも言われます。
透明な冬という季節だからこそ、眼には見えない香りが一層引き立つのです。
お正月の年賀の席に、香を焚いて設えるのは京都の冬の最高のおもてなしなのです。
冬の京都では、花街での「事始め」で使う扇子作りがたけなわでした。
こうした木版刷りは、今も、京都の季節の行事に花を添えます。
木版印刷の雑貨が並ぶ「竹笹堂」。
ここは、職人の手でひとつひとつ手刷りしたオリジナルの雑貨を販売しています。
来年の干支をモチーフにした年賀状や、お正月に定番のポチ袋。
可愛い絵柄の作品の数々。
実はデザインから手摺りまで一貫して作られていました。
それらの作品を手掛けたのは、原田裕子さん。
江戸時代より木版画は絵師・彫師・摺師の分業により制作されていますが、
ハガキやポチ袋の制作ではすべて一人で行っています。
原田さんは木版アートの文具も制作していました。
冬は年賀状やぽち袋の制作に忙しい季節。
ひょうたんに見える絵柄をよく見ると、ひょうたんにうずを巻いた蛇が隠れています。
「ひょうたんからへび」これは、「瓢箪から駒」をアレンジした言葉遊びからデザインが生まれました。
江戸時代に生まれた「めで鯛」のようなおめでたい定番柄を思わせる親しみやすさ。
そんな、いつまでも愛されるデザインを原田さんは目指しています。
京都のお正月の設えは意外にもシンプル。
季節とともに暮らす京都には、豪華な設えは必要ないのかもしれません。
それが「京都はんなり」の秘密です。
らん布袋
京都市中京区上瓦町64 |
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花政
京都市中京区河原町三条上がる東入恵比須町443 |
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高台寺 和久傳
京都市東山区高台寺北門前鷲尾町512 |
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薫玉堂
京都市下京区堀川通西本願寺前 |
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竹中木版 竹笹堂
京都市下京区綾小路通西洞院東入る新釜座町737 |